こんにちは、現役小児科医の『こどもドクター』です(医師5年目、小児科専攻医)。

冬になると、小児科の病棟や外来はインフルエンザ」のお子さんでいっぱいになります。 急な高熱でぐったりしたり、うわ言を言ったりするわが子の姿を見て、『このまま家で様子を見ていて大丈夫なの?』と不安で押しつぶされそうになる親御さんも多いはずです。

私はこれまで、軽症から入院が必要な重症ケースまで、多くの子どもたちを診てきました。 この記事では、「病院に行くべきタイミング」や絶対に知っておいてほしい「危険なサイン(異常行動など)」、そして「ワクチンの本当の効果」など、親御さんが一番知りたいポイントを、現場の小児科医の視点で分かりやすくお伝えします。

免責事項

本記事は、一般的な医療情報を提供することを目的としており、診断や治療を行うものではありません。
お子さまの症状や体調について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。

インフルエンザ 1分まとめ

インフルエンザとは?

冬に大流行するウイルス感染症です。急な高熱と強いだるさ、頭痛、筋肉痛が特徴で、肺炎や脳症などの合併症に注意が必要です。

すぐ病院へ行く「危険なサイン」

「ぐったりしている」「呼吸が苦しそう」「水分が取れない」「意味不明な言動(うわ言)がある」「5分以上続くけいれん」があれば、夜間や休日でもすぐに受診してください。

家庭でのケア

こまめな水分補給と休養が第一です。解熱剤を使う場合は、絶対に「アセトアミノフェン(カロナール)」のみを使用してください。

ワクチンの本当の効果

生後6か月から毎年接種がおすすめです。絶対にかからないわけではありませんが、重症化・入院・インフルエンザ脳症を防ぐ強い効果があります。

インフルエンザとは?

インフルエンザの流行時期と潜伏期間

日本では毎年10月ごろから流行が始まり、1月〜2月にピークを迎えます。ウイルスに感染してから約2日ほどで症状が出現(潜伏期間)するのが特徴です

インフルエンザとかぜとの違い

インフルエンザも大きなくくりでは「かぜ症候群」の一種ですが、ふつうのかぜとは以下の点が大きく違います。

  • 急に高熱(38℃以上)が出やすい
  • 体のだるさや頭痛、関節痛・筋肉痛などの「全身症状」が強い
  • 熱性けいれん・脳症・肺炎といった重い合併症を起こすことがある

 子どもの発熱時のホームケアについては、以下の記事も参考にしてください。

【小児科医解説】こどもの発熱!熱の高さより大切な危険サインとホームケアこの記事では、こどもの発熱や感染症について、小児科医が保護者向けにわかりやすく解説しています。 受診の目安、夜間の対応、解熱剤の使い方、重症化のサインなど、実際の診療経験に基づいてまとめています。 不安なときの判断の参考にしてください。...

インフルエンザの主な症状

代表的な症状は以下の通りです。

  • 急な高熱、頭痛、関節痛、強いだるさ
  • 咳、のどの痛み、鼻水
  • 嘔吐や下痢、腹痛などの胃腸症状

多くは1週間ほどでよくなりますが、幼児では咳や疲れやすさが長引くことがあります。

★小児科医の視点:熱がぶり返す「二峰性発熱」

インフルエンザでは、いったん熱が下がった後に、もう一度発熱することがよくあります。これを「二峰性(にほうせい)発熱」とよびます。 「ぶり返した!悪化した!」と慌ててしまう親御さんが多いですが、インフルエンザの通常の経過であることがほとんどなので、まずは落ち着いて様子を見て大丈夫です。

ただし、「ぐったりして元気がない」「呼吸が苦しそう」「咳がどんどん酷くなっている」といった場合は、肺炎などの合併症を起こしている可能性があるため、必ず再受診してください。

 長引く咳や苦しそうな咳については、以下の記事をご覧ください。

こどもの急な咳はいつ受診する?小児科医が教える危険サインと対処法子どもの急な咳(急性咳嗽)で「病院へ行く目安は?」「夜間救急に行くべき?」と悩むパパ・ママへ。現役小児科医が、陥没呼吸などの危険なサイン、ケンケン・ゼーゼーといった要注意な咳の音、夜の咳を和らげるホームケア(鼻水吸引やはちみつ等)をわかりやすく解説します。...

注意すべきインフルエンザの合併症

インフルエンザは、以下のような合併症を引き起こすことがあります。

  • 肺炎、中耳炎、喘息発作、クループ症候群
  • 熱性けいれん、熱せん妄(うわ言を言う、幻覚を見るなど)
  • インフルエンザ脳症(命に関わる重篤な合併症です)

 熱性けいれんの正しい対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。

こどもの熱性けいれん完全ガイド:救急車を呼ぶ「5分」の目安と正しい対応を小児科医が解説「目の前で子どもがけいれんしたら…」パニックになる親御さんへ。現役小児科専攻医が、いざという時に命を守る「正しい対応とNG行動」「救急車を呼ぶ5分ルール」を、救急外来でのリアルな経験をもとにやさしく解説します。...

重症化しやすい子ども(ハイリスク群)の特徴

以下に当てはまるお子さんは、インフルエンザが重症化するリスクが高いため、小児科でも特に注意深く診察し、積極的に治療を行います。

【インフルエンザ重症化リスク】

  • 2歳未満の乳幼児
  • 早産で生まれたお子さん
  • 心臓や肺、免疫の基礎疾患(持病)がある
  • 抗がん剤や免疫を抑える薬を使用している
  • アスピリンを長く飲んでいる

 川崎病とアスピリンについては、以下の記事を参照してください。

川崎病とは?小児科医が教える症状の見分け方と入院・治療のすべて乳幼児に多い川崎病の症状、診断基準、治療法、予防接種の注意点まで小児科医がわかりやすく解説します。 ...

病院を受診する目安(行くべきタイミングと危険なサイン)

インフルエンザの「検査」を受けるベストなタイミング

親御さんから「熱が出たので、すぐにインフルエンザの検査をしてください!」とよく言われますが、実は発熱してすぐ(半日以内)は、ウイルス量が少なく、検査をしても「陰性」になってしまうことが非常に多いです。

そのため、お子さんの機嫌がよく、水分も取れているようであれば、発熱から「半日〜24時間」ほど待ってから受診するのが、最も正確に検査ができるベストなタイミングです。

すぐに受診すべき「危険なサイン」

ただし、インフルエンザは進行が早く、急激に悪化することがあります。以下の「危険なサイン」が1つでも当てはまる場合は、検査のタイミングなどは気にせず、夜間や休日であっても、すぐに救急外来などを受診してください。

  • ぐったりしている、反応が悪い(視線が合わない)
  • 意味不明な言動(うわ言や幻覚)、5分以上続くけいれん
  • 呼吸が苦しそう、肩で息をしている、陥没呼吸(胸がペコペコ凹む)
  • 水分が全く取れない、半日以上おしっこが出ない
  • 持続する激しい嘔吐や、強い腹痛
  • 生後3か月未満の赤ちゃんの発熱
  • 心臓や喘息など、持病のある子ども
  • 発熱が4〜5日以上長引いている場合も再受診が必要です

★小児科医からのメッセージ

インフルエンザは、ふつうの風邪などのウイルス感染症と比べても、特にさまざまな症状で急激に悪くなりやすい病気です。「こんなことで夜間に病院に行っていいのかな」と迷う必要はありません。親御さんが見て「いつもと違う、何かおかしい」と感じた時は、気軽に小児科を受診してご相談くださいね。

インフルエンザの治療と絶対に知っておくべき薬の注意点

インフルエンザの治療

インフルエンザの治療には、必ずしも特別な薬(抗ウイルス薬)が必要なわけではありません。自分の免疫力で自然に治ることも多いですが、重症化しやすいお子さん(2歳未満や持病がある子など)には積極的に処方します。

  • タミフル(粉薬・カプセル)
    1日2回、5日間しっかり飲み切ります。
  • リレンザ・イナビル(吸入薬)
    粉を吸い込むお薬です(イナビルは1回の吸入で完了します)。
  • ゾフルーザ(錠剤・顆粒)
    1回飲むだけで完了するお薬です。

★小児科医の視点:タミフルと「異常行動」について

「タミフルを飲むと、急に走り出したりベランダから飛び降りようとしたりする異常行動が怖い」というご相談をよく受けます。実は近年の研究で、薬を飲んでいなくても、インフルエンザウイルス自体の影響で異常行動が起こることが分かっています。そのため、薬の種類にかかわらず、高熱が続く間は、お子さんを一人にせず、窓の鍵をしっかり閉めるなどの安全対策をお願いします。

解熱剤は「アセトアミノフェン」のみ!

ご家庭にある解熱剤や市販の風邪薬を使う際は、必ず「アセトアミノフェン(カロナールなど)」の成分のものだけを使用してください。

大人用の鎮痛解熱剤によく含まれている「ロキソニン(ロキソプロフェン)」や「アスピリン」などを子どもに使用すると、命に関わる脳の病気(ライ症候群)やインフルエンザ脳症を急激に悪化させる非常に高いリスクがあります。絶対に使ってはいけません。

 ライ症候群の恐ろしさや詳細については、以下の外部サイト(MSDマニュアル)もご参照ください。

小児の健康上の問題/乳児と幼児における健康上の問題/ライ症候群

インフルエンザのホームケアと家庭内感染を防ぐコツ

自宅でできるホームケアの基本

インフルエンザは多くの場合、家でしっかり安静にしていれば自然に治っていきます。以下のポイントを意識して、お子さんをケアしてあげてください。

  • 解熱剤の正しい使い方
    熱が高くて眠れない、つらくて水分が取れない時などには、無理せず解熱剤(必ずアセトアミノフェン)を使用して、少しでも体を楽にしてあげてください。
  • こまめな水分補給
    高熱で脱水になりやすいため、経口補水液やお茶、りんごジュースなどを「少しずつ・こまめに」飲ませてあげてください。
  • 消化のよい食事
    無理に食べさせる必要はありません。うどんやゼリー、スープなど、本人が食べられそうな消化のよいものを与えましょう。

家庭内感染を防ぐ工夫

インフルエンザは、「飛沫(咳やくしゃみのしぶき)」と「接触(ウイルスがついた手や物を触る)」の両方で広がります。家族全滅を完全に防ぐのは難しいですが、以下の工夫でうつるリスクを大きく減らすことができます。

  • マスクの着用
    可能な年齢であれば、お子さんにも看病する大人にもマスクを着けてもらいましょう。
  • 手洗いとタオルの分離
    手洗いをこまめにしっかり行い、手拭きタオルや食器は絶対に共有しないようにしてください(ペーパータオルの使用もおすすめです)。
  • 咳エチケット
    咳やくしゃみが出るときは、ティッシュで口を覆うか、腕の内側(袖)でブロックするように教えましょう。
  • 寝室・隔離部屋を分ける
    可能な範囲で、感染したお子さんと他の家族(特にきょうだい)が過ごす部屋や寝室を分けましょう。

小児科医からのメッセージ:看病で「完璧」を目指さなくて大丈夫!

ネットや育児書には理想的な看病の方法が書いてありますが、実際の現場ではそう上手くいかないことばかりです。外来でよく聞かれるお悩みに、小児科医のホンネでお答えします。

  • 熱が高い時の解熱剤、使っていいの? 
    熱と闘っている証拠だからと我慢させる必要はありません。「熱で眠れない」「ご飯が食べられない」「ぐったりして水分もとれない」といった時は、積極的に解熱剤(アセトアミノフェン)を使って、少しでも体を楽にしてあげてください。
  • 消化の良いものを全く食べてくれない
    インフルエンザは嘔吐や下痢などお腹の症状が出やすいため、できればうどん等の優しいものがベストです。でも、どうしても食べない時は、アイスでもゼリーでもジュースでも、その子が「食べられるもの」なら最悪なんでもOKです! 何よりも怖い「脱水」と「低血糖」を防ぐことが最優先です。

いつから保育園・学校に行ける?(登園・登校の目安)

インフルエンザにかかった場合、ウイルスの感染力を広げないために、学校保健安全法という法律で「お休みしなければならない期間(出席停止期間)」がしっかり決められています。

インフルエンザの出席停止期間

発症した日(熱が出た日)を「0日」として5日が経過し、 かつ、熱が下がってから2日(幼児は3日)が経過するまで。

インフルエンザワクチン

生後6か月以降のこどもには毎年のインフルエンザワクチン接種が推奨されています

ワクチン接種の大きな効果

  • 救外受診や入院が半分以下になる
  • 肺炎や脳症などの重い合併症が減る

 以下は、インフルエンザワクチンの高い重症化予防効果を調査した最新の研究報告です。
Estimated Vaccine Effectiveness for Pediatric Patients With Severe Influenza, 2015-2020 

★小児科医からのメッセージ:「打ってもかかる」のはなぜ?

「毎年ワクチンを打っているのにインフルエンザにかかってしまった。」という声はよく聞きます。確かに、ワクチンは感染を100%防ぐ魔法の薬ではありません。

しかし、私の実際の小児科での臨床経験でも、ワクチンを打っていないお子さんのほうが圧倒的に症状が重くなりやすいと日々痛感しています。 ワクチンの最大の目的は「かからないこと」ではなく、「最悪の事態(重症化や脳症)から子どもを守ること」です。大切なお子さんを守るお守りとして、接種をおすすめします。

また、最近は従来の注射だけでなく、「鼻から投与するタイプ」のワクチンも使えるようになり、注射が苦手なお子さんの負担も減ってきています。かかりつけの小児科で相談してみてください。

インフルエンザワクチンについて、詳しくは以下の厚生労働省のページを参照してください。
厚生労働省: 令和6年度インフルエンザQ&A

まとめ(Take Home Message)

Take Home Message

発熱直後は検査が「陰性」になりやすいため、可能なら半日〜24時間待ってから受診するのがベストです。
ぐったりしている」「うわ言を言う」「けいれん」などがあれば、時間や日数を気にせず、すぐに救急外来を受診してください。
インフルエンザワクチンは「感染を完全に防ぐもの」ではなく、「命に関わる重症化や脳症を防ぐ」ための大切なお守りです。

あとがき

私はこれまで、インフルエンザによって脳症などの重い合併症を起こし、長く入院したり、後遺症が残ってしまったりする子どもをたくさん見てきました。

インフルエンザワクチンを接種することで、こうした最悪のリスクを大きく減らすことができます。大切なお子さんの命と未来を守るために、ぜひ毎年のワクチン接種を検討していただきたいと強く願っています。

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受診の目安

本記事は一般的な医療情報を解説するものです。

次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く

上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。

免責事項

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子育て中の保護者の方へ

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