こんにちは、小児科医の『こどもドクター』です(医師5年目、小児科専攻医)。

小児科病棟が最も緊張感に包まれるのが「RSウイルス」の流行期です。

小さな体で一生懸命に苦しそうに息をし、ミルクも飲めずにぐったりしてしまう赤ちゃん。その姿を隣で見守り、代わってあげたいと願う親御さんの痛いほどの不安を、私は毎日病棟で目の当たりにしています。

この記事では、RSウイルスの正体と注意点、そして今、妊娠中のお母さんにできる『赤ちゃんを守るための新しい選択肢』について、現場の小児科医の視点でやさしくお伝えします。

免責事項

本記事は、一般的な医療情報を提供することを目的としており、診断や治療を行うものではありません。
お子さまの症状や体調について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。

【1分でわかる】RSウイルスのまとめ

RSウイルスとは? 

鼻水・咳・発熱などから始まり、2歳までにほぼ全員が感染する身近なウイルスです。ただし、気道が狭い「生後数か月の赤ちゃん」はあっという間に重症化するため、私たち小児科医が最も警戒する感染症の一つです。

迷わず受診する目安

  • 呼吸のサイン
    息を吸うたびに胸や首元がペコペコへこむ、小鼻がピクピクする、呼吸が速い、うーうー唸っている
  • 哺乳のサイン
    息苦しくて、ミルクや母乳を飲むのを途中でやめてしまういつもの半分以下しか飲めない
  • 顔色が悪い、ぐったりしている
  • 生後3か月未満の感染

合併症 

肺炎、中耳炎、熱性けいれん、無呼吸発作、将来の喘鳴(ぜーぜーする)などに注意が必要です。

予防について 

妊娠中のお母さんがRSVワクチン(アブリスボ)を接種することで、お腹の赤ちゃんに抗体(免疫)が移行し、最も危険な生後早期の重症化を劇的に防ぐ効果が期待できます。

★小児科医の視点 

「病院に行った方がいいかな?」と迷った時は、お子さんの「呼吸の状態」と「ミルクの飲み」を見てください。私たちが1番注意してみているのもこの2点です。
また、特効薬がないRSウイルスにおいて、妊娠中に打てるワクチンは、私たち小児科医が長年待ち望んでいた「命を守る最強のプレゼント」です。

RSウイルスとは?

誰もが通る道。RSウイルスとは?

RSウイルスは、主に咳やくしゃみ(飛沫感染)、おもちゃや手についたウイルス(接触感染)を介して広がる、赤ちゃんにとって非常に身近なウイルスです。

実は、1歳までに約7割、2歳までにはほぼ100%の赤ちゃんが一度は感染すると言われています。また、生涯にわたって何度もかかる可能性があるのも特徴です。

ウイルスをもらってから症状が出るまでの「潜伏期間」は、だいたい4〜6日です。

小児科医の視点

ひと昔前まで、RSウイルスといえば「冬の病気」の代表格でした。しかし近年、その常識は変わりつつあります。

現場で診療していると、最近では年中いつでも大流行しうるようになってきており、完全に季節性がなくなってきていると肌で感じています。春や夏であっても、「ただの夏風邪だろう」と油断は禁物です。時期を問わず、赤ちゃんの鼻水や咳がひどくなったり、息苦しそうにしている時は、早めに私たち小児科医にご相談ください。

RSウイルスの主な症状

最初は「普通の風邪かな?」と思うようなサインから始まります。

  • 鼻水、咳、発熱
  • ゼーゼー、ヒューヒューという苦しそうな呼吸音(喘鳴)
  • 咳き込みがひどく、ミルクや食事がとれない
  • 呼吸が浅く、回数が多い

ここで特に知っておいていただきたいのが、症状の進み方です。 普通の風邪は数日で良くなることが多いですが、RSウイルスは発症してすぐではなく、4〜5日目に向かって鼻水・咳や呼吸の苦しさがジワジワとピークになることが多く、その後もしつこく長引く傾向があります。 この「タイムラグ」を知っておくだけで、「どうして治らないの!?」と夜間にパニックになるのを防ぐことができます。

小児科医の視点

RSウイルスは小学生以上の上の子や保護者の方が感染しても、熱すら出ず「ちょっと鼻水が出るな」程度の軽い症状で終わることが非常によくあります

しかし、免疫が弱く気道が狭い赤ちゃんにうつると、状況は一変します。赤ちゃんは特に鼻水が大量に出るため、まるで「自分の鼻水に溺れている」ような状態になり、ひどく呼吸が苦しくなってしまうのです。

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RSウイルス感染症で入院が必要となる危険なサイン

RSウイルスは、多くの場合は軽い鼻風邪で終わります。しかし、約30%の赤ちゃんでは、ウイルスが肺の奥深く(細気管支や肺)まで入り込み、一気に重症化してしまいます。

私たち小児科医が「これは入院治療が必要だ」と判断する、現場で非常に多い4つのケース(危険なサイン)について解説します。

細気管支炎による「呼吸困難と哺乳不良」

ウイルスが肺の細い気管支に炎症を起こし、空気の通り道が極端に狭くなる状態です。これが、RSウイルスによる入院で最も多い理由です。

危険なサイン

息を吸うたびに胸や首元がペコッと凹む(陥没呼吸)、肩を上下させて息をする、息を吐くときに「うー、うー」と唸る(呻吟)、呼吸が速い。

親御さんへの注意点

鼻水と呼吸の苦しさで息継ぎができず、「数口飲んですぐに飲むのをやめてしまう」「むせて吐いてしまう」といった哺乳不良が見られたら、脱水と体力低下を防ぐため、点滴や酸素投与のサポート(入院)が必要になります。

RSウイルスによる「喘息発作」

もともと気管支喘息を持っているお子さんにとって、RSウイルスは非常に強力な「引き金」になります。

危険なサイン

普段の風邪の時よりも激しい「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴が止まらず、横になって眠れない。呼吸が苦しく哺乳が低下してきている。

親御さんへの注意点

吸入薬を使っても発作が治まらない場合は、速やかに受診してください。

熱が長引く・悪化する「細菌性肺炎」

RSウイルスで弱った肺の組織に、さらに別の「細菌」が感染してしまう状態です。

危険なサイン

4〜5日経っても高熱が下がらない、あるいは一度下がりかけた熱が再び上がり、咳がさらに激しくなる。

親御さんへの注意点

ウイルス感染だけなら抗生剤は効きませんが、細菌性肺炎を併発している場合は、速やかな抗生剤の点滴治療(入院)が必要になります。

小さな赤ちゃんの命に関わる「無呼吸発作」

生後3か月未満の小さな赤ちゃん、特に1か月未満は、呼吸の機能がまだ未熟なため、息が苦しいと呼吸自体を休んでしまう(息が止まる)ことがあります。

危険なサイン

寝ている時の呼吸が規則的じゃなくなった、止まっている。唇が青白くなっている(チアノーゼ)。

親御さんへの注意点

肩をトントンと刺激すると再び呼吸を始めることが多いですが、一度起きると繰り返し起こることがあるため、直ちに病院を受診(救急要請)してください。

★小児科医の視点:病棟のリアルと、ご家族への負担

流行期になると、私たち小児科病棟はこうした症状で苦しむ赤ちゃんであっという間にいっぱいになります。

重症化すると酸素投与が必要になったり、時には人工呼吸器での管理が必要になるほど重篤で、命に関わるケースも決して珍しくありません。また、治療は赤ちゃんの回復を待つ「サポート」が中心になるため、入院期間が数日から1週間以上と長引くこともよくあります。

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RSウイルス感染後の合併症

入院が必要になるような重篤な合併症(無呼吸発作や細菌性肺炎など)については前章でお伝えしました。ここでは、「峠を越えたあとに気をつけるべき合併症」と、親御さんからよく聞かれる「将来の後遺症(喘息)」について解説します。

非常によくある「中耳炎」 

2歳未満の赤ちゃんは、言葉で「耳が痛い」と伝えることができません。私たちが外来で診察していて1番多いのは、「RSウイルスの熱が一度下がって安心していたのに、数日後にまた熱が出た」というケースです。他にも、「しきりに耳を気にして触っている」「異常に機嫌が悪くて泣き止まない」といった様子があれば、急性中耳炎を併発しているサインかもしれません。

急な発熱時に起きやすい「熱性けいれん」

 RSウイルスは高熱が出ることが多く、その熱が急激に上がるタイミングで、白目をむいてガクガクと手足を震わせる「熱性けいれん」を起こすことがあります。 初めて見ると非常にパニックになりますが、多くは数分で自然に治まります。
詳しくはこちらの記事でご確認ください。

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哺乳不良から引き起こされる「脱水症」と「低血糖」

 RSウイルス特有の「鼻水が詰まって息継ぎができず、ミルクが飲めない」という状態が続くと、小さな赤ちゃんはあっという間に「脱水症」になってしまいます。おしっこの回数が極端に減ったり、泣いても涙が出ない、唇がカサカサしている時は注意が必要です。

さらに、私たち小児科医が脱水と同じくらい警戒しているのが「低血糖」です。 赤ちゃんは大人と違って、体にエネルギー(糖分)を蓄えておくタンクが非常に小さいため、ミルクが飲めない状態が続くと、あっという間に血液中の糖分が足りなくなってしまいます。 「いつもより顔色が悪くて、ぐったりしている」「泣き声が弱々しい」という時は、ウイルスで疲れているだけでなく低血糖を起こしている危険なサインの可能性があります。

点滴で水分と糖分を補うサポートが必要になりますので、急いで受診してください。

★小児科医の視点:「RSにかかると、将来喘息になるの?」という不安へ

喘息には他のアレルギー疾患やアレルギー素因なども複雑に関わるため、「RSにかかったから必ず喘息になる」というわけでは決してありません。ただ、重症化すると将来の喘鳴(ゼーゼーしやすい体質)のリスクが高まるとは言われています。自己判断で悲観せず、早めに受診して私たちと一緒に焦らずお子さんの気管支を守っていきましょう。

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RSウイルスワクチンとは?

2023年に日本で承認された、妊婦さん向けのRSウイルスワクチン「アブリスボ」。
これまで自費(3〜4万円)だったこのワクチンですが、なんと2026年4月1日から国の「定期接種」となり、原則無料(公費負担)で受けられるようになります! 
国が「社会全体でRSウイルスから赤ちゃんを守ろう」と認めた、非常に画期的なニュースです。

アブリスボの仕組みと効果

妊婦さんがワクチンを接種すると、お母さんの体内でRSウイルスに対する「抗体(免疫)」が作られます。その抗体が胎盤を通じてお腹の赤ちゃんへ移行し、「生まれてすぐの最も無防備な赤ちゃん」を重症化から強力に守ってくれるのです。

接種対象と方法

  • 対象
    妊娠28〜36週の妊婦さん(公費対象となる期間)
  • 回数
    1回のみ(筋肉注射)
  • 副反応
    軽度な腕の痛み・赤み程度で、重篤な副反応はまれです。
  • 費用
    無料(2026年4月以降の定期接種) 
    ※2026年3月までは任意接種のため、医療機関により3〜4万円程度の自己負担がかかります。

ご自身の妊娠週数と照らし合わせて、接種のタイミングやかかる費用については、かかりつけの産婦人科医にぜひご相談ください。

★小児科医の視点:「予防できるなら、しておいてほしい」

私は日々病棟で、RSウイルスによって入院し、小さな体で一生懸命に息をして苦しむ赤ちゃんを本当にたくさん診ています。

呼吸管理(酸素や人工呼吸器)が必要になったり、入院が長期化したりして、付き添うご家族も心身ともに疲弊してしまう姿を目の当たりにするたび、非常に胸が痛みます。

「予防できるなら、どうかしておいてほしい」 これが、現場で戦う私たち小児科医の切実な願いです。

妊娠中にワクチンを接種することは、生後すぐの最も無防備で不安定な時期を乗り越えるための、最高の備えになります。お腹の中にいる今しかできない「大切なわが子への最初のプレゼント」として、ぜひ前向きに検討してみてください。

詳しくは下記を参照してください。
アブリスボ(ABRYSVO)

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まとめ

Take Home Message

RSウイルスは、ほぼすべての子どもが感染するウイルスである
生後数か月の赤ちゃんでは重症化・入院リスクが高い
合併症や喘息などの後遺症にも注意が必要である
妊婦さんがアブリスボを接種することで赤ちゃんに抗体が移行し、生後すぐの重症化リスクを大きく下げられる

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あとがき

RSウイルスは感染力が非常に強く、どんなに気をつけていても完全に防ぎきれないことが多い病気です。お子さんが感染してしまっても、「私のせいで…」とご自身を責める必要は全くありません。
もしお子さんが息苦しそうにしていたり、少しでも不安なことがあれば、夜間でも迷わず私たち小児科医を頼ってください。一緒に、大切な赤ちゃんの小さな体を守っていきましょう!

受診の目安

本記事は一般的な医療情報を解説するものです。

次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く

上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。

免責事項

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子育て中の保護者の方へ

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