【小児科医が解説】こどものヒトメタニューモウイルス!RSウイルスとの違いや受診の目安・ホームケア
こんにちは、現役小児科医の『つき先生』です (医師5年目、小児科専攻医)。
「熱が続いて咳がひどいんです…」 「保育園でヒトメタニューモウイルスが出たって言われたんですけど、怖い病気ですか?」
春から初夏にかけて、小児科の外来でとても増えるのがこのご相談です。
「ヒトメタなんて聞いたことない!」と不安になるかもしれませんが、私たち小児科医にとってはとても身近な「子どもの風邪のウイルス」の一つです。
この記事では、小児科医の視点から、こどものヒトメタニューモウイルスの症状や「RSウイルスとの違い」、お家でできるホームケア、そして「どんな時に病院に行くべきか」という危険なサインまで、分かりやすく徹底解説します。
この記事でわかること
- ヒトメタニューモウイルスってどんな病気?(RSウイルスとの違い)
- こどもの症状と、気をつけたい合併症(肺炎、中耳炎や喘息など)
- 【要注意】受診や入院が必要になる危険なサイン
- お家でできる正しいホームケアと過ごし方
- 小児科医からのメッセージ「保育園で防ぐのは困難です」
- 【おまけ】大人にうつった時の症状と、検査の裏事情
第1章 ヒトメタニューモウイルスってどんな病気?(RSウイルスと激似!)
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、名前は物々しいですが、特別な病気ではなく、ありふれた風邪ウイルスの一つです。
小児科医の視点から言うと、ヒトメタニューモウイルスは「RSウイルス」とほぼ同じような感染症です。
しかし、いくつか特徴的な「違い」があります。
流行期
主に3〜6月(春〜初夏)にかけて流行します。(※RSウイルスは秋〜冬に多い傾向があります)
年齢層
RSウイルスは1歳未満の赤ちゃんが重症化しやすいですが、ヒトメタはママからの免疫(移行抗体)が防御に働くため、RSに比べると小さな赤ちゃんの重症化はやや少ない傾向にあります。
そのため、少しお兄ちゃん・お姉ちゃんの「2〜4歳くらい」で初感染して症状が出ることが多いです。
(とはいえ、生後3ヶ月未満の赤ちゃんがかかるとやはり重症化リスクがあるため、入院になることもよくあります)
感染率と「繰り返し」
非常に感染力が強く、5歳までに約70%、10歳までにはほぼ100%の子どもが一度は感染します。
さらに、ウイルスに色々な「型」があるため、一度かかっても何度も繰り返し感染してしまう厄介な特徴があります。
ワクチンがない
RSウイルスには最近ワクチンが登場してきましたが、ヒトメタには予防するワクチンがありません。
RSウイルスについては、以下の記事で解説しています。
第2章 こどもの症状の基本と、気をつけたい合併症
約4〜6日の「潜伏期間」を経て発症します。
ほとんどのお子さんは「発熱」「咳(咳嗽)」「鼻水(鼻汁)」といった、いわゆる風邪の症状(上気道症状)が出るだけで、数日で自然によくなります。
ですので、「保育園でヒトメタが出た!」と聞いて過剰にパニックになる必要はありません。
子どもの発熱については、こちらの記事をどうぞ。
ただし、このウイルスには知っておきたい2つの厄介な特徴があります。
- 分泌物(鼻水・痰)がものすごく多い!
とにかく鼻水や痰の分泌物が多いウイルスなので、それが鼻の奥や耳に溜まって「中耳炎」や「副鼻腔炎(ちくのう症)」を合併しやすいです。 - 胃腸症状も出る
熱や咳だけでなく、嘔吐や腹痛、下痢などのお腹の風邪のような症状を伴うこともよくあります。
さらに、ウイルスの排出期間が1〜2週間と長いため、咳や鼻水も1〜2週間くらい長引くことが多い、少ししぶとい風邪です。
★小児科医の視点:ヒトメタの「咳」の特徴は?
ウイルスが気管支に分泌物(痰)をたくさん作るため、コンコン、ケンケンといった乾いた咳ではなく、「ゼロゼロ」「ゴホゴホ」といった痰が絡んだ湿った咳が長引くのが特徴です。
夜寝転がると鼻水がのどに落ちてきて(後鼻漏)、咳き込んで吐いてしまう子もよくいます。
第3章 【要注意】受診や入院が必要になる危険なサイン
RSウイルスとそっくりなため、一部のお子さんではウイルスが肺の奥まで入り込み、気管支炎、細気管支炎、肺炎といった「下気道(かきどう)炎」を起こすことがあります。
もともと気管支が弱い子は気管支喘息の発作を引き起こしやすい(約10〜15%で増悪する)病気でもあります。
RSウイルスより「高熱」が出やすい!
下気道炎を合併した場合、RSウイルスよりも高熱になることが多く、平均して5日ほど高い熱が続くという特徴があります。
高熱になりやすいため、ヒトメタニューモウイルスにかかったお子さんの約3%で「熱性けいれん」が起こるとも言われています。
お子さんが急な高熱を出した際に注意したい「熱性けいれん」については、以下の記事で詳しく解説しています。
受診の目安
以下のようなサインが見られた場合は、お家で様子を見ず、早めに小児科を受診してください。
- 発熱が続いている(目安:3〜4日)
- 息を吐くときに「ゼイゼイ、ヒューヒュー」と音がする(喘鳴)
- 呼吸が早くて、胸のあたりがペコペコへこむ(陥没呼吸)
- 肩で息をしている、小鼻がピクピク動いている
- 水分や食事が摂れない
- けいれんした
- その他心配な症状がある時
入院の目安
ヒトメタニューモウイルスで入院になりやすいケースとしては、「細菌性肺炎の合併」「気管支喘息発作」「熱性けいれん」「経口摂取不良(水分や食事がとれずぐったりしている)」が多いです。
このような状態になった場合は、入院しての点滴や酸素投与などのが必要になります。
第4章 お家でできるホームケア(特効薬はありません)
「じゃあ、ヒトメタって分かっても薬はないの?」
はい、その通りです。
RSウイルスと同じく、ヒトメタニューモウイルスをやっつける特効薬(抗ウイルス薬)はありません。
そのため、治療は症状を和らげる「対症療法」が基本になります。
- 熱やのどの痛みがあれば解熱鎮痛剤を使う
- 咳止めや痰切りの薬を飲む
- 中耳炎を防ぐためにお家でしっかり鼻水を吸ってあげる
- 加湿器で部屋の湿度を保つ(50〜60%)
「お薬を飲んでウイルスを退治する」のではなく、「お子さん自身の免疫力でウイルスを追い出すのを、お薬やケアでサポートしてあげる」というイメージです。
鼻水や痰が非常に多いため、お家でのこまめな鼻水吸引が最も効果的なケアになります。
子どもの咳のホームケアついて、以下の記事をご確認ください。
★小児科医からのメッセージ「自分を責めないでください」
外来で「私が週末に人混みに連れて行ったから…」「保育園でちゃんとうがい手洗いをさせていなかったから…」と自分を責める親御さんがとても多いです。
しかし、小児科医として断言します。 幼稚園や保育園で、ヒトメタニューモウイルスの感染拡大を防ぐのは「困難(ほぼ不可能)」です。
潜伏期間が4〜6日と長く、症状が軽い子も多いため、誰がウイルスを持っているか完璧に見分けることは誰にもできません。
だから、「誰からうつされた!」と犯人探しをしたり、うつってしまったご自身を責めたりしないでください。
RSウイルスと激似のヒトメタですが、実は「中耳炎の合併率(15〜30%)」や「将来の気管支喘息のリスク」については、RSウイルスよりも少ない(低い)ことが分かっています。
高熱が出やすくて看病は本当に大変ですが、過剰に恐れすぎる必要はありません。
第5章 【おまけ】親にうつるとどうなる?大人が検査されない裏事情
最後に、看病するパパママ向けのお話です。
ヒトメタニューモウイルスは非常に感染力が強く、親御さんにも簡単にもうつります。
過去に何度も感染して免疫がある大人の場合、こどものように高熱が出ることは少ないですが、「熱はないのに、とにかく激しい咳と痰が1〜2週間以上も長引く」という特徴があります。
SNSなどで「謎風邪」と呼ばれているのはこれが原因です。
大人が内科でヒトメタと診断されない理由
「こどもがヒトメタだったから内科に行ったのに、ただの風邪って言われました。
なんで検査してくれないの?」とよく聞かれますが、これには理由があります。
ヒトメタの抗原検査は、実は外来では、【6歳未満のお子さんで、かつ画像検査などで肺炎が強く疑われる状況】でしか健康保険が適用されません。
そもそも私たち小児科医がこの検査を行う本当の目的は、「重症な患者さんの治療方針を決めるため」「不必要な抗菌薬(抗生物質)の使用を避けるため」です。
風邪の症状で済んでいる大人や軽症のこどもに痛い思いをしてまで検査をしても、治療法が変わらないため意味がないのです。
だからこそ、大人はどんなに咳が長引いても確定診断がつかず、「ただの風邪がこじれましたね」と言われてしまいます。
まとめ
ヒトメタニューモウイルスは、RSウイルスと激似の子どもの風邪!(流行期は3〜6月)
ほとんどは「発熱・咳・鼻水」だが、咳などは1〜2週間と長引く。
分泌物が多いため中耳炎・副鼻腔炎になりやすく、嘔吐などの胃腸症状も出る。
下気道炎を起こすとRSより高熱になりやすく(平均5日)、熱性けいれんにも注意。
「ゼイゼイする」「胸がペコペコへこむ」などの危険な呼吸のサインがあれば早めに受診を!
特効薬はないため、RSウイルスと同じく鼻水吸引などのホームケアが重要!
保育園で防ぐのは困難。RSより喘息や中耳炎のリスクは低いので自分を責めないで!
近い時期に流行する溶連菌についてはこちらの記事を参照してください。
あとがき
毎日子育て、本当にお疲れ様です! こどもの風邪をもらって、自分もゲホゲホ咳き込みながら看病するのは本当に地獄ですよね…。(僕もよくうつされるので痛いほど分かります)
名前を聞くと怖い病気のように感じますが、基本的にはお薬とホームケアで乗り切れる風邪の仲間です。
こどもだけでなく、パパやママも無理をせず、辛い時は周りを頼ってゆっくり休んでくださいね。
- 日本小児科学会:ヒトメタニューモウイルス感染症
- 東京医学社『小児内科 第52巻増刊号 小児疾患診療のための病態生理1 改訂第6版』
- 小児科ですぐに戦えるホコとタテ. 診断と治療社, 2022年.
本記事は一般的な医療情報を解説するものです。
次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く
上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
このブログでは「こどもの病気や健康」に関する正しい情報を小児科医の視点からお届けしています。
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