こんにちは、現役小児科医のこどもドクターです (医師5年目、小児科専攻医)。

子どもが突然高い熱を出したり、のどを痛がったりすると、とても心配になりますよね。
その原因として注意が必要なのが「溶連菌感染症」です。

この記事では、最新の医学的根拠に基づきつつ、「どんな症状に気をつければいいか?」「家族にうつらないためにはどうする?」といった、診察室で親御さんからよくいただく疑問にわかりやすくお答えしていきます。

免責事項

本記事は、一般的な医療情報を提供することを目的としており、診断や治療を行うものではありません。
お子さまの症状や体調について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。

【1分でわかる】溶連菌感染症

溶連菌とは?

のどに起こる「細菌」の感染症です。
風邪(ウイルス)とは違い、抗菌薬(抗生物質)での治療が必要になります。

主な症状

突然の高熱」「のどの強い痛み」「いちご舌」「全身の発疹」「首のリンパ節の腫れ」などが特徴です。逆に、鼻水や咳はあまり出ないのがポイントです。

病院に行く目安

高熱とのどの痛みがある」「発疹やいちご舌が出ている」「きょうだいや園で溶連菌が流行している」場合は、小児科での検査をおすすめします。

治療

処方された抗菌薬を「10日間」しっかり飲み切ることが一番大切です!
熱が下がっても、リウマチ熱などの合併症を防ぐために絶対に途中でやめないでください。

登園・登校

抗菌薬を飲み始めてから24時間以上が経ち、熱が下がって元気があれば登園・登校OKです!

溶連菌ってどんな病気?

溶連菌とは?

溶連菌は、のどや皮膚、首のリンパ節など、さまざまな場所に感染する「細菌」です。

今回の記事では、子どもに最もよく見られ、のどに強い炎症を起こす「溶連菌性咽頭炎(いんとうえん)」について解説していきます。

  • うつり方
    日常の咳やくしゃみ(飛沫感染)などで周囲にうつりやすく、学校や幼稚園などでよく流行します。
  • なりやすい年齢
    5〜15歳の子ども(特に小学生)に多く見られます。逆に、3歳未満の小さなお子さんがかかることは「まれ」です。
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溶連菌の主な症状

溶連菌では以下の症状が特徴的です。

  • 38℃以上の急な発熱
  • 強いのどの痛み(つばを飲み込むのも痛がります)
  • 扁桃腺(へんとうせん)や首のリンパ節の腫れ
  • 舌が赤くブツブツになる「いちご舌
  •  頭痛、腹痛、吐き気などの胃腸症状
  • 体や手足に小さな赤い発疹(ブツブツ)が出ることも

★小児科医の視点:ただの風邪との決定的な違いは?

親御さんがご自宅で「もしかして溶連菌かも?」と気づくための最大のポイントは、「熱が高くてのどをすごく痛がるのに、咳や鼻水があまり出ない」ということです。ふつうの風邪(ウイルス)なら、熱と一緒に咳や鼻水がダラダラ出ることが多いです。

また、溶連菌の時の「のどの赤み」は非常に特徴的です。私たち見慣れている小児科医であれば、口を開けてのどの奥をパッと診ただけで「あ、これは溶連菌だな」とわかることもよくあるんですよ。

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溶連菌の検査と絶対に守ってほしい「治療のキモ」

溶連菌の検査

のどの赤みなどの特徴的な症状発熱がある場合には、のどの奥を綿棒でこすって調べる「迅速抗原検査」を行います。

★小児科医の視点:症状がない時は検査しません!

実は、健康な子どもの12〜20%は、のどに溶連菌がいても悪さをしない「保菌(ほきん)」という状態です。保菌しているだけであれば、周りにうつす力も弱く、治療のお薬を飲む必要はありません。そのため、無症状(ただ保菌しているだけ)の子を見つけてしまうのを防ぐため、基本的には「のどの痛みや熱などの症状がある場合のみ」検査を行います。

ただし、実際の外来では、ご家族や身近なお友達に溶連菌の人がいて、本人にも熱やのどの痛みが出た場合は、高確率で感染していると判断します。

抗菌薬は「10日間」飲み切り

溶連菌はウイルスではなく「細菌」なので、治療には「抗菌薬(抗生物質)」を使用します。

適切な抗菌薬を飲み始めると、通常は24時間以内にスッと熱が下がり、のどの痛みも引いて元気になります。
しかし、ここで「治ったから」と自己判断でお薬をやめてしまうのは絶対にNGです!

完全に菌をやっつけるには、「10日間」しっかり抗菌薬を飲み続ける必要があります。
もし途中でやめてしまうと、恐ろしい合併症を引き起こす危険性があります。
大切なお子さんを守るために、処方された日数は必ず飲み切るようにしてください。

薬を飲んでも熱が下がらない時は?

抗菌薬を飲み始めてから24時間経っても高い熱が下がらない場合は、注意が必要です。
溶連菌ではなく、症状がとてもよく似ている「川崎病」など、別の病気が隠れている可能性がありますので、必ずもう一度小児科を受診してください。

 川崎病の詳しい症状や受診の目安については、以下の記事もぜひご覧ください。

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溶連菌が引き起こす「怖い合併症」

溶連菌は、しっかりお薬(抗菌薬)を飲み切らないと、のどの奥に菌が残り、後から以下のような恐ろしい合併症を引き起こすことがあります。どれもまれな病気ですが、万が一発症すると非常に厄介です。

溶連菌感染後急性糸球体腎炎

感染から1〜2週間後に発症する腎臓の病気です。尿に血やタンパクが混じる顔のむくみ尿が出にくくなる、といった症状が出ます。高血圧による脳症のリスクがあるため、入院しての血圧管理や治療が必要になります。

リウマチ熱

感染から2〜3週間後に発症します。関節炎や、心臓の弁・心膜に炎症が起きる怖い病気で、重症化すると心不全に至ることもあります。繰り返し発症すると心臓の状態が悪化するため、「年単位」での抗菌薬の内服が必要になってしまいます。

その他の重篤な合併症

のどの奥に膿がたまる「扁桃周囲膿瘍」、全身の臓器がダメージを受ける「劇症型溶連菌感染症」、感染をきっかけに精神・神経症状が出る「PANDAS(パンダス)」などがあります。

合併症の多くは、処方された抗菌薬を10日間きっちり飲み切ることで予防できます。 大切なお子さんを守るため、そして早めに気づいて適切な治療を受けるためにも、気になる症状があればすぐにかかりつけ医にご相談ください。

 溶連菌に限らず、子どもが急な高熱を出した際に注意したい「熱性けいれん」については、以下の記事で詳しく解説しています。

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★小児科医からのメッセージ

外来で「10日間きっちり飲み切ってくださいね」とお伝えすると、「えっ、そんなに長く!?」と驚かれることがよくあります。お薬を長く飲ませるのは、親御さんにとっても本当に大変だと思います。

でも、溶連菌の治療において、後半のお薬は「熱を下げるため」ではなく、「心臓や腎臓を恐ろしい後遺症から守るための『お守り』」なのです。途中でやめてしまって、数週間後に血尿が出て入院になってしまう、そんな悲しいケースを小児科医は何度も見てきています。
お子さんの未来の体を守るため、どうか最後の一滴(一錠)まで一緒に頑張って飲み切ってください!

家庭でのケアと登園・登校の目安

食事とホームケア

溶連菌の最大の辛さは「のどの強い痛み」です。

  • 痛みが強すぎる時
    抗菌薬を飲み始めると1日ほどでスッと楽になりますが、それまで痛みが強くて水分もとれない時は、我慢せずに「解熱鎮痛薬(カロナール)」を使って痛みを和らげてあげましょう。
  • 食事の工夫
    熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの(オレンジジュースなど)は、のどに沁みるので避けましょう。ゼリーや冷ましたうどんなど、つるんと飲み込みやすいものがおすすめです。

家庭内感染を防ぐ工夫

溶連菌は「咳やくしゃみのしぶき(飛沫)」や「タオルの共有(接触)」でうつります。抗菌薬を飲み始めるまでは感染力が強いため、家族間でコップやタオルを共有しないようにし、看病する大人も手洗いを徹底しましょう。

もしご家族に「高熱」や「のどの痛み」が出た場合は、早めに小児科や内科を受診してください。

いつから保育園・学校に行ける?(登園・登校の目安)

インフルエンザのように「解熱後〇日」という決まりはありませんが、登園・登校には以下の目安をクリアしている必要があります。

登園・登校のOKサイン

適切な抗菌薬を飲み始めてから24時間が経過し、かつ熱が下がって元気が戻っていること。

お薬を飲んで24時間経つと、周りのお友達にうつす感染力がほとんどなくなります。

まとめ(Take Home Message)

Take Home Message

突然の高熱」「強いのどの痛み」「いちご舌」が特徴です。普通の風邪と違い、咳や鼻水があまり出ないのが見分けるポイントです。
クラスで流行っていても、無症状の「保菌」状態であれば検査や治療は不要です。のどの痛み熱が出た時に受診しましょう。
処方された抗菌薬は、熱が下がって元気になっても絶対に途中でやめず「10日間」しっかり飲み切ってください!恐ろしい合併症(リウマチ熱など)を防ぐためのお守りです。
適切な抗菌薬を飲み始めてから「24時間」が経ち、熱が下がって元気が戻っていれば学校や園に行って大丈夫です。

あとがき

溶連菌感染症は珍しい病気ではなく、多くの子どもがかかる身近な感染症です。
そして、正しく治療することで合併症を予防することができます。ご家庭での観察と医師の指示に沿った治療がとても大切です。
この記事が少しでも保護者の皆さまの安心につながれば幸いです。

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受診の目安

本記事は一般的な医療情報を解説するものです。

次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く

上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。

免責事項

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子育て中の保護者の方へ

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