【小児科医解説】1歳半健診の内容や持ち物は?引っかかる基準と言葉の遅れまとめ
こんにちは、現役小児科医の『つき先生』です(医師5年目、小児科専攻医)。
1歳半(1歳6か月)は、人間としての基本的な機能が完成に近づき、言葉・社会性・運動のどれをとっても、お子さまの発達を評価する上で非常に重要な「キーエイジ」です。
しかし、市町村から1歳半健診(1歳半検診, 1歳6か月児健康診査)の案内が届くと、「うちの子、まだあまり喋らないけど大丈夫かな?」「健診で引っかかったらどうしよう…」と不安になるパパやママも多いのではないでしょうか。
この記事では、現役小児科医が「1歳半健診では具体的に何を見ているのか」「様子見と言われたらどう捉えればいいのか」について、実際の診察室での視点やホームケアのコツを交えながら分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 1歳半健診の当日の流れと必要な持ち物
- 1歳半健診で小児科医が実際にチェックしている4つのポイント
- 「言葉が出ない=病気」ではない?様子見になる本当の割合
- 場所見知りで大泣き!積み木ができなくても大丈夫な理由
- 言葉が遅い子に、お家でできる「スマホと代弁」の関わり方
- 卒乳、指しゃぶりなど、1歳半のよくあるお悩みQ&A
目的は「テスト」ではありません
優劣をつけるためではなく、病気や発達の遅れの早期発見と、保護者の育児不安を解消しサポートにつなげるための入り口です。
引っかかる(様子見になる)割合
実は、自治体にもよりますが「約10〜20%」のお子さまが要観察(様子見)や再確認となっています。
引っかかるのは珍しいことではありません!
「言葉が出ない=病気」ではない
有意語(意味のある言葉)が出ていなくても、大人の簡単な指示が理解できていて「指差し」ができれいれば、多くは言葉の爆発期を待つ段階です。
(定期的な状況確認などのフォローは入ります。)
泣いてできなくても大丈夫
場所見知りで泣いてしまい、積み木などができなくても異常ではありません。
「お家ではできています」と堂々と伝えてください。
1歳半健診(1歳6か月児健診)とは?
いつ・どこで受ける?
1歳半健診は、母子保健法によって各市区町村が実施を義務付けられている法定健診です。
原則として無料で受けられます。
いつから受けられるの?
対象は「満1歳6か月を超え、満2歳に達しない幼児」と法律で決まっています。
つまり、「1歳6か月になった日から」しか受けることはできません。
多くの場合、対象時期が近づくと自治体から問診票や案内が郵送で届きます。
どこで受けるの?
保健センターなどで行われる「集団健診」と、指定の小児科クリニックなどで行う「個別健診」があります。(自治体によって異なります)
1歳半健診の当日の流れと必要な持ち物
健診をスムーズに終えるために、一般的な流れと持ち物を把握しておきましょう。
当日の一般的な流れ(所要時間:約60〜90分)
自治体によって順番が入れ替わることもありますが、基本的には以下のようなステップで進みます。
- 受付
- 問診(保健師さんが事前のアンケートをもとに日頃の様子を伺います)
- 身体測定(オムツ1枚になって身長・体重・頭囲を測ります)
- 内科診察(私たち小児科医が発達や身体のチェックを行います)
- 歯科健診(歯科医師による虫歯や噛み合わせの確認です)
- 結果説明・子育て相談(保健師や栄養士からのフィードバックがあります)
基本の持ち物リスト
- 母子健康手帳
- 自治体からのお知らせ、受診票
- 記入済みの問診票
- 健康保険証、子ども医療費受給者証
- 替えのオムツ、おしりふき、汚れ物を入れるビニール袋
- 水分補給できるもの(お茶やお水)
- 歯科健診用の歯ブラシ(自治体から指定がある場合)
【小児科医おすすめ】あると助かる便利アイテム
1歳半の健診は、とにかく「待ち時間」との戦いになることが多いです!
- お気に入りのおもちゃや絵本
待ち時間にご機嫌を保つための必須アイテムです。 - サッと羽織れるバスタオル・ポンチョ
身体測定の前後はオムツ1枚で待機することがあります。冬場の防寒対策や、冷たい診察台の上にサッと敷くのにも大活躍します。 - メモ帳と筆記用具
医師や保健師に聞きたいことを事前にメモしておき、もらったアドバイスを書き留めるのにとても便利です。
1歳半健診でチェックしているポイント
ここからは、実際に小児科医が診察室でお子さまのどこを注意深く見ているのか、4つのポイントに分けて詳しく解説します。
身体発育・身体所見
身長・体重・頭囲を測定し、母子健康手帳の「成長曲線」の帯(パーセンタイル)に入っているかを確認します。
身長・体重
1歳半(1歳6〜7か月未満)の94%のお子さまが入る基準(3〜97パーセンタイル)は以下の通りです。
- 男の子: 身長 75.8〜84.9cm / 体重 8.78〜12.89kg
- 女の子: 身長 75.2〜84.9cm / 体重 8.30〜12.20kg
私たち小児科医は、単なる数字の大小よりも「その子なりのペースで成長曲線のカーブに沿って大きくなっているか(極端に体重が増えなくなっていないか)」を最も重視して見ています。
【これまでの成長を振り返ってみましょう】
「1か月健診」や「3〜4か月健診」の頃から、成長曲線に沿ってどれくらい大きくなったか、ぜひ母子手帳を見返してみてくださいね。
当時の記事もあわせて読むと、お子さまの成長をより実感できますよ!
頭囲
ご家族の体質で頭が大きいこともありますが、急激な頭囲の拡大や発達の遅れを伴う場合は、頭部MRIなどでの詳しい評価が必要になることもあります。
脊柱(背骨)
後ろ向きで立ってもらい、背骨が曲がっていないか確認します。
低年齢で見つかる側弯症(そくわんしょう)は進行のリスクがあるため要注意です。
皮膚
アトピー性皮膚炎の有無や、特異な「あざ(カフェオレ斑や白斑)」がないかを確認します。
神経症状に関わる病気のサインになることがあるためです。
アトピー性皮膚炎についてはこちらの記事を!
その他
胸のへこみ(胸郭異常)、斜視などの視力異常、男の子の場合は精巣が陰嚢に下りているかなどもチェックします。
粗大運動(歩き方や体全体の動き)
1歳半では、9割以上のこどもが「一人歩き(独歩)」ができるようになります。
小児科医は、単に歩けるかどうかだけでなく、「歩く姿勢」も観察しています。
歩き始めの頃に見られる両手を上に挙げる姿勢(ハイガード歩行)から、両手を下に下げて安定して歩ける姿勢(ローガード歩行)に成長しているかを見ます。
★小児科医の視点:歩行に関する注意点
まだ独り歩きができなくても、お尻で移動する「いざりばい(シャフリングベイビー)」など、正常範囲の発達のゆっくりさであることも多いです。
しかし、「一度歩けていたのに歩けなくなった」という発達の退行が見られる場合は、精密検査が必要です。
微細運動(手先の器用さ)
両手の親指と人差し指の機能が分離し、「物をつまむ」「ひねる」といったことができるようになります。
健診ではよく「積み木」を使います。
- 積み木を2〜3個以上積めるか
- つまみ方は「手のひら全体」か、指先を使った「はさみ持ち」か
- クレヨンで殴り書きができるか
「体はしっかり動くのに、手先の細かい作業だけが極端に苦手」という場合は、軽度の脳性まひなどが隠れていないか慎重に評価します。
言語・社会性と「耳の聞こえ」
1歳半健診で、パパ・ママが一番不安に感じやすいのが「言葉」の項目です。
私たち小児科医は、言葉の数だけでなくコミュニケーションの土台を総合的に見ています。
有意語(意味のある言葉)があるか
「パパ」「まんま」「わんわん」など、意味を理解して使っている言葉が3語以上あるかを確認します。
ちなみに、「アンパンマン」や「パンマン」も立派な有意語です!
「指差し」と理解
ここが一番重要です!
「あれ取って(要求の指差し)」や「あ、飛行機だね(共感の指差し)」ができるか、「ポイして」などの簡単な指示を理解して行動できるかを確認します。
視線とやり取り(共同注意)
名前を呼んで目が合うか、大人の行動の真似(バイバイやお辞儀など)をするか、「どうぞ・ちょうだい」のやり取りができるかなど、周囲への興味(社会性)が育っているかを見ます。
耳の聞こえ(聴力)の確認
実は、言葉が遅い原因が「中耳炎などで耳が聞こえにくかったから」というケースも少なくありません。
見えないところからの呼びかけや、ささやき声に振り向くかどうかも合わせて確認しています。
言葉の遅れは必ずしも病気ではない
言葉の遅れは、自閉スペクトラム症などを疑うきっかけの一つにはなりますが、「言葉が遅い=必ず何かの病気」というわけでは決してありません。
指差しなどでコミュニケーションが取れていれば、多くは言葉の爆発期を待つ段階です。
★小児科医の視点:フォローアップについて
1歳半で有意語が全くない場合は、数ヶ月後に保健センターから状況確認の連絡が来たり、遊びの教室に呼ばれたりする(フォローアップの対象になる)ことが一般的です。
これは「異常だから監視される」のではなく、「お子さんの言葉が育つタイミングに合わせて、必要な時にすぐサポートできるよう専門家が伴走するため」です。
焦らず、保健師さんなどと繋がりながら見守っていきましょう。
健診で「様子見(要観察)」と言われたら?
健診で「様子を見ましょう」や「再確認が必要です」と言われると、目の前が真っ暗になる保護者の方も少なくありません。
しかし、冒頭でもお伝えした通り、約10〜20%のお子さまが「様子見」となっています。
「その場でできなかった=異常」ではありません。
1歳半のお子さまは、場所見知りや人見知りで、慣れない会場では大泣きしてしまい、積み木などを嫌がって全くやらないのは日常茶飯事です。
私たち小児科医もそれを理解した上で、あえて時間を置いて再確認する意味で「様子見」と判断することがあります。
もし発達のゆっくりさを指摘されたとしても、それは「劣っている」という烙印ではなく、「お子さまに合ったサポートを、少し早めに見つけて整えてあげるためのスタートライン」に立てたということです。
不安な時は一人で抱え込まず、保健師やかかりつけの小児科医を頼ってください。
1歳半のよくあるお悩みQ&A
健診の相談でパパ・ママからよく聞かれる質問に、小児科医がお答えします。
言葉が遅くて心配。家でできることは?
日常の「指差し」や「表情」に反応して、親が言葉を「代弁」してあげましょう。
お子さんがお茶を指差して「あー」と言ったら、「お茶が飲みたいんだね、はいどうぞ」と、お子さんの気持ちを大人が言葉にしてあげる関わり方が、言葉を育てる一番の近道になります。
また、テレビやスマホは「一方通行」になりがちなので、長時間見せっぱなしにするのは避けましょう。
ただ、忙しい時は頼っても大丈夫です。
もし一緒に見るなら「わんわん、可愛いね」と会話のきっかけにしてみてください。
焦らず、絵本や手遊びなど、親子のやり取りを楽しむことが言葉を育む最高の栄養になります。
指しゃぶり・おしゃぶりがなおりません。
無理に怒らず、2歳〜2歳半での卒業を目指しましょう。
1歳半ではまだ無理にやめさせる必要はありませんが、長く続くと歯並びや、言葉の発達(口の動き)に影響が出ることがあります。
無理やり指を引き抜いて怒るのは逆効果です。
手をつないだり、おもちゃで遊んだりして、自然と手が口から離れる時間を増やしていきましょう。
夜寝るまでにすごく時間がかかります。
まずは「朝の光」と「日中の活動」を見直しましょう。
睡眠ホルモン(メラトニン)は、朝の光を浴びてから約14〜16時間後に分泌されます。
夜9時に寝かせたいなら、朝7時には起こしてカーテンを開けましょう。
また、就寝1時間前からのスマホやテレビ(ブルーライト)を控えることも重要です。
お昼寝は長くても1時間半〜2時間程度にとどめましょう。
卒乳したいけれど、なかなかやめられません。
「〇歳までにやめなきゃいけない」という決まりはありません。親子のペースで大丈夫です。
医学的な卒乳(離乳の完了)の目安は、歩けることやコップが使えることよりも、「1日3回の食事がしっかり食べられていて、栄養の大部分を食事から摂れている(体重が増えている)こと」です。
これができていれば、いつ卒乳しても大丈夫です。
一方で、「まだやめたくない」のであれば無理にやめる必要はありません。
現在、WHO(世界保健機関)は2歳以上までの授乳を推奨しています。
ただし、離乳食がしっかり食べられるようになると、口の中に残った食べカス(糖分)と夜間の授乳が合わさることで、虫歯のリスクがグッと上がります。
「寝る前の歯磨き」と「授乳後にお茶や水を飲ませる」などのケアはしっかり行っていきましょう。
パパにも協力してもらいながら、お母さんとお子さんが納得できるタイミングを探してみてくださいね。
1歳半を過ぎると、いよいよ「トイレトレーニング」の足音が聞こえてきますね。イヤイヤ期と重なって便秘になりやすいこの時期の対策について、以下の記事で詳しく解説しています!
まとめ (Take Home Message)
1歳半健診は、優劣をつける場ではなく「サポートの入り口」です。
身体、歩き方、手先の器用さ、言葉と社会性を総合的に小児科医が評価します。
「言葉が出ない=病気」ではありません。指差しや指示の理解が重要。
泣いてできなくても、「家ではできています」と堂々と伝えてOK!
「様子見」と言われても焦らず、かかりつけ医や保健師と一緒に見守っていきましょう。
定期接種 (ワクチン)についてはこちら!
あとがき
毎日子育て、本当にお疲れ様です!
1歳半健診は、毎日頑張っているパパやママの「通知表」ではありません。
「うちの子、積み木しないかも…」と家で特訓してから来る親御さんもいますが、できなくても全く問題ありません。
お子さんの成長を専門家と一緒に喜び、日頃のちょっとした悩みを置いて帰る場所だと思って、肩の力を抜いてリラックスして受診してくださいね。
- 国立成育医療研究センター「改訂版乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」
- WHO(世界保健機関)「Infant and young child feeding」
- 水野克己.『新版 お母さんがもっと元気になる乳児健診 健診を楽しくすすめるエビデンス&テクニック』. メディカ出版
本記事は一般的な医療情報を解説するものです。
次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く
上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
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