【川崎病の症状】長引く熱や発疹に注意!小児科医が教える受診のサイン
こんにちは、小児科医の『つき先生』です(医師5年目、小児科専攻医)。
『川崎病』
初めて聞いた方は少し怖く感じるかもしれませんが、小児科の現場では毎年多くのお子さんが経験する、実はとても「身近な」病気のひとつです。
特徴的な発疹や目の充血など、診断には経験が必要な場面もあります。
私は、毎年多くの川崎病のお子さんの主治医として治療に携わっています。
親御さんが一番不安に思うポイントを、最新のガイドラインと現場の経験を交えて、本音で分かりやすくお伝えします。
この記事を読めばわかること
- 川崎病はどんな病気なのか?
- なぜ入院が必要なのか?
- 心臓への影響はどう防ぐのか?
川崎病とは?
子どもに多い全身の血管に炎症が起きる病気です。原因はまだ完全には解明されていませんが、早めに治療(入院)を始めることがとても大切です。
主な症状
- 38度を超える高熱が続く
- 目の充血
- 唇の真っ赤な腫れ、いちご舌
- 全身の発疹(BCG注射の跡の赤み)
- 手足の腫れや赤み
- 首のリンパ節の腫れや痛み
受診の目安
熱が長引き、上記のサインが「いくつか」当てはまる場合は、川崎病の可能性があります。
早めに小児科を受診してください。
治療と1番大切なこと
入院のうえ、免疫グロブリン点滴(IVIG)とアスピリンというお薬を使った治療が標準です。
早期に正しい治療を行うことで、一番怖い「心臓の合併症」をしっかり防ぐことができます。
川崎病とは?意外と身近な子どもの病気

川崎病は、子どもに発症した時に初めてその名前を知ったという保護者の方がほとんどです。あまり一般的には知られていませんが、実は日本で意外とよく遭遇する病気です。
川崎病の特徴
- 4歳以下の子どもに多い(学童期以降に発症することもあります)
- 日本ではなんと70人に1人の頻度で発症する
- アジア人(特に日本・韓国などの東アジア)の子どもに多い
- 発見から半世紀以上経った今でも、原因はまだ判明していない
原因不明と聞くと怖いかもしれませんが、決して珍しい病気ではありません。この記事で、正しい知識を一緒に学んでいきましょう!
一番気をつけたい合併症「冠動脈瘤」とは?
川崎病は、全身の血管に炎症が起こる病気です。
その炎症が、心臓に酸素や栄養を送る大切な血管(冠動脈)に及び、コブができてしまうことがあります。
それが「冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)」です。
血管にコブ(瘤)ができることで、
将来的に狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気のリスクが高まってしまいます。
もし治療をしなかった場合、4人に1人ほどの割合でこの冠動脈瘤ができると言われています。
しかし、早く治療を始めれば、多くの子どもでこの合併症を防ぐことができます。
川崎病の治療においては、「冠動脈瘤を残さないこと」が何よりも大切なのです。
★小児科医の視点
診察室で、「心臓の血管にコブができるかもしれません」「将来の心筋梗塞のリスクになります」とお話しすると、当然ですが、ほとんどの親御さんがひどく不安な表情をされます。
でも、過度に怯えすぎないでください。
実は、この心臓の合併症(冠動脈瘤)は、「高熱が10日以上続く」とできやすくなることが分かっています。
裏を返せば、熱が10日以上長引いてしまう前に早期に病気を見つけ、しっかりと治療を行って熱を下げれば、ほとんどのケースで後遺症を残さずしっかり治すことができるのです。
高熱による「けいれん」にも注意。
川崎病は高熱が続くため、熱の上がり始めなどに「熱性けいれん」を起こすこともあります。
いざという時に焦らないための対応は、こちらの記事で詳しく解説しています。
川崎病の症状〜「全身が赤くなる」のが特徴〜

川崎病を疑うとき、私たち小児科医は以下の「6つの主要症状」をチェックします。
親御さんは、「川崎病=子どものからだが全体的に赤くなる病気」と覚えておいてください。
川崎病の6つの主要症状
- 高熱がつづく(通常5日以上)
- 目が赤くなる(両目の充血)
- 唇・舌・口の中が赤くなる(唇が赤く腫れる、舌がイチゴのようにブツブツになる)
- 発疹が出る(全身に赤いブツブツや斑点が出る)
- 手足の指先が赤く腫れる(手のひらや足の裏が赤くパンパンに張る)
- 首のリンパ節が腫れる(首のグリグリが腫れて痛がる)
上記の症状のうち「5つ以上」を満たすと、「川崎病」と診断されます。 症状が4つ以下の場合でも、他の病気が否定されれば「不全型川崎病」と診断されます。
もっと具体的な診断基準については、「川崎病診断の手引き 改訂第6版」を参照してください。
★小児科医の視点
川崎病は、熱が出た初日からこの6つの症状が一気に全部揃うわけではありません。
発症してすぐの段階では症状が揃わず、私たち小児科医でも「現時点ではただの風邪なのか、川崎病の始まりなのか診断が難しい」ということがよくあります。 そのため、「熱が下がらないな」「なんだか体が赤くなってきたな」と思ったら、川崎病を念頭に置いてお子さんの症状をよく観察することが非常に重要になります。
小児科医が推奨する『体温計』の使い分けセット
普段の様子見や寝ている時のチェックには非接触型、受診の目安にする正確な体温を知りたい時は脇下での予測式、というように使い分けるのが、今の小児科外来でのスタンダードなスタイルです。
タニタ(非接触型)
寝ているお子さんを起こさず、1秒で測れます。
テルモ(脇下型)
病院でも使われる正確な20秒予測検温です。
似ている病気との見分け方
川崎病と非常によく似た症状(高熱、目の充血、発疹など)が出る病気として、
「溶連菌感染症」や「アデノウイルス感染症」、「麻疹」などがあります。
これらは検査キットなどで診断できることも多いため、外来ではこれらの感染症ではないかをしっかり見極めながら、川崎病の診断を慎重に進めていきます。
詳しくは以下の記事を参照してください。
川崎病の治療目標は
「心臓の後遺症を防ぐこと」

川崎病と診断された場合、基本的には入院して「免疫グロブリン療法」と「アスピリン内服」による治療を行います。
順調に回復すれば、1週間ほどで退院できることがほとんどです。
治療の最大の目標は、「冠動脈瘤(心臓の血管のコブ)を残さないこと」です。
前述の通り、高熱が10日間以上続くとこの冠動脈瘤ができやすくなります。
そのため、できるだけ早く川崎病と診断し、速やかに治療を始めて熱を下げることが、後遺症を防ぐ最大の鍵になります。
免疫グロブリン療法
現在、川崎病の治療で世界的に最も標準とされているのが「免疫グロブリン療法」です。
強い炎症を速やかに抑え込み、冠動脈瘤ができるのを防ぐ高い効果があります。
免疫グロブリン療法とは?
- 細菌やウイルスからからだを守ってくれる「抗体(免疫の成分)」を集めたお薬です。
- 1〜2日間かけて、ゆっくりと点滴で投与します。
- 80%以上のお子さんが、この最初の治療で熱が下がり改善します。
(もし熱が下がらない場合は、再投与などの追加治療を行います) - 副作用について
まれにアレルギー反応や一時的な発熱、嘔気などが起こることがあります。
しかし、入院中は心電図やモニターでしっかり全身状態を管理しながら行うため、安全に治療を受けることができます。
アスピリン(飲み薬)
「アスピリン(バファリンなどにも含まれる成分)」は、炎症を抑える働きに加えて、「血液をサラサラにして血のかたまり(血栓)を予防する働き」があります。
心臓の血管に後遺症が残らないようにするための、非常に重要なお薬です。
アスピリンの飲み方
- 発熱中(入院中)
1日3回に分けて多めに内服し、炎症をしっかり抑え込みます。 - 解熱後(退院後)
1日1回の内服に減らします。
ここは「冠動脈瘤の予防目的」となるため、退院後も2〜3か月ほど毎日しっかり飲み続ける必要があります。
アスピリン内服中の感染症
退院後、アスピリンを飲んでいる期間中に「インフルエンザ」や「水疱瘡(みずぼうそう)」にかかると、「ライ症候群」と呼ばれる重篤な急性脳症を引き起こす危険性があります。
アスピリン内服中にインフルエンザなどが疑われる熱が出た場合は、決して自己判断で市販の風邪薬や解熱剤を使わず、必ず主治医に相談してください。
その他の治療
川崎病の治療は、以下の学会ガイドラインに沿って安全に進められます。
免疫グロブリン療法で熱が下がりきらなかった場合の追加治療など、さらに詳しい情報についてはこちらをご参照ください。
日本小児循環器学会 川崎病急性期治療のガイドライン(2020年改訂版)
★小児科医の視点:入院中の「毎日の検査」には大切な意味があります
入院中、親御さんにとって一番辛いことの一つが、お子さんが採血で泣き叫んだり、じっと心臓のエコーを受けたりする姿を見守ることだと思います。
「こんなに何度も痛い思いをして大丈夫なの?」と胸が締め付けられるかもしれません。
実は、この入院中のこまめな血液検査と心臓エコーこそが、川崎病の治療において非常に重要な「命綱」になります。
点滴(免疫グロブリン)がしっかり効いて全身の炎症が数値として治まってきているか。
そして何より、「心臓の血管(冠動脈)にコブができる兆候がないか」を、私たち小児科医はエコーを使ってリアルタイムで厳重に評価・監視しています。
お子さんには数日間、検査を頑張ってもらうことになりますが、将来の心臓の後遺症を絶対に残さないための大切なプロセスです。
退院後の生活「3つの約束」

無事に熱が下がり、退院のめどが立つとご家族も本当にホッとされると思います。
しかし、川崎病の治療は「退院したら終わり」ではありません。
お子さんの大切な心臓を生涯守り抜くために、退院後も以下の3つの約束を守っていただく必要があります。
アスピリンは自己判断でやめない
退院後も「冠動脈瘤の予防」のために、アスピリンの飲み薬が続きます。
発症から2〜3か月間は毎日しっかり内服を続けます。
その後の外来での心臓エコーで「冠動脈に異常がない」と確認できて初めて、お薬を終了することができます。
運動制限と「5年間」の定期検診
・運動について
心臓の血管(冠動脈)に後遺症が残らなければ、体育や外遊びなど、普段通りの生活や運動が可能です。
・定期検診について
後からコブができていないかを念には念を入れて確認するため、発症から「5年間」は定期的に外来で心臓超音波検査を受けていくことが大切です。
皮下注射の生ワクチンは
「6ヶ月間」お休み
入院中の治療で「免疫グロブリン点滴」を使用した場合、その抗体の影響で、一部の予防接種(皮下注射の生ワクチン:MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンなど)の効果が弱くなってしまいます。
そのため、これらの生ワクチンの接種は「退院から6か月間」は控える必要があります。
予防接種のスケジュールが大きくずれることになるため、どのタイミングでどのワクチンを打つべきか、必ず主治医(かかりつけの小児科)と相談して一緒に計画を立て直しましょう。
ワクチンについては以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ(Take Home Message)

川崎病は「早期診断・早期治療」が何より重要な病気です。疑う症状があれば、すぐに小児科へ! 入院のうえ、点滴(免疫グロブリン)と飲み薬(アスピリン)で治療します。 ほとんどの子どもが後遺症なく回復できますが、心臓の血管のコブ(冠動脈瘤)には注意と定期検診が必要です。 退院後の生ワクチンのスケジュールは大きく変わるため、必ず医療機関で相談しましょう。
あとがき
「原因不明の病気」「心臓の後遺症」と聞くと、ご不安でいっぱいになってしまうと思います。
しかし、現在はしっかりとした治療法が確立されている病気です。
お子さんの「いつもと違うサイン」に一番早く気づけるのは、他でもない親御さんです。
熱が長引く、体が赤くなってきたなど、少しでも不安なことがあれば、いつでも私たち小児科医を頼ってください。
・川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2020年改訂版)
・日本小児循環器学会 川崎病急性期治療のガイドライン(2020年改訂版)
・岡本 充宏.小児科ですぐに戦えるホコとタテ. 診断と治療社, 2022年
・McCrindle BW, et al. Diagnosis, Treatment, and Long-Term Management of Kawasaki Disease. Circulation. 2017.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28356445/
・Fukazawa R, et al. JCS/JSCS 2020 Guideline on Cardiovascular Sequelae in Kawasaki Disease. Circ J. 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33028751/
本記事は一般的な医療情報を解説するものです。
次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く
上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
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