病気 解説

こどものマイコプラズマ肺炎とは?症状・治療・感染対策を小児科医が解説

「マイコプラズマ肺炎」という名前を聞いたことがあるでしょうか?
小学生くらいのこどもに多く、咳が長引くことが特徴の病気です。4年に1度ごとに流行し、「オリンピック肺炎」と呼ばれることもあります。この記事では、小児科医の立場から、マイコプラズマ肺炎の症状や治療、入院になるケース、家庭でのケアなどについてわかりやすく解説します。

マイコプラズマ肺炎とは?

4年に1度くらいの周期で大きな流行があり、「オリンピック肺炎」とも呼ばれます。

新型コロナの影響で流行が止まっていましたが、2024年には8年ぶりの大流行となりました。

主に小学生に多いですが、乳児や大人にも感染することがあります。

家族内感染の確率は約40%と高く、学校や職場などでも広がります。

マイコプラズマの流行期に、園児や小学生が熱が続いてしつこい咳をしている場合、印象としては80%ぐらいマイコプラズマの診断になっている気がします。

潜伏期間と感染力

潜伏期間(うつってから症状が出るまで)はおよそ 2週間程度です。

症状が出る前の2〜8日くらいから他の人にうつす可能性があります。

症状が強い時期に感染力のピークとなり、その後も 4〜6週間ほど 周囲にうつす力が続くことがあります。

症状

以下のような症状が特徴的です。

主な症状
  • 長引く発熱
  • 強い咳(特に夜に悪化し、寝られなくなることも)
  • 咳き込みで吐いてしまうことがある
  • だるさ、頭痛
  • 吐き気、下痢、腹痛などの消化器症状

特徴的なのは 長引くしつこい咳 で、4週間以上続くこともあります。

合併症

こどもは次のような合併症を起こすことがあります。

  1. 肺炎(重症化すると酸素が必要になり入院へ)
  2. 喘息発作
  3. 中耳炎
  4. 発疹(多形滲出性紅斑)
  5. 熱性けいれん
  6. まれに脳症
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診断と治療

マイコプラズマの検査としては、抗原検査や血液検査やPCR検査が行われます。

最も正確なのはPCR検査ですが、ほとんど大きな病院にしかなく、開業医から紹介されて行うことが多いです。

マイコプラズマ肺炎には抗菌薬の飲み薬が効きます。

マイコプラズマ肺炎の治療

よく使うのは マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン、クラリスロマイシン)です。ただし味が苦く、飲めない子も多いです。

薬が効かない「マクロライド系抗菌薬耐性菌」の場合、

  • 8歳未満 → トスフロキサシン(効果が弱い)
  • 8歳以上 → ミノマイシン(ただし歯が黄色くなる副作用があるため小さい子には使えません)

適切な薬を使っても熱が下がらないときは、体の中でマイコプラズマに対して炎症が強すぎる「高サイトカイン血症」を疑い、ステロイド治療を行うこともあります。

自然に熱が下がることもありますが、他の人にうつさないためにも抗菌薬の使用が望ましいとされています。

入院が必要になるケース

多くは外来で治療できますが、以下のような場合には入院が必要です。

入院が必要になるケース
  1. 酸素が足りなくなる(酸素化低下)
  2. 喘息の発作や他の合併症がある場合
  3. 炎症が強くステロイド投与が必要なとき(高サイトカイン血症)
  4. 食欲がなく、水分や食事がとれない(経口摂取低下)

こうしたときは点滴や酸素投与など、入院での治療が行われます。

家庭でできるケア

  • 水分補給:熱や咳で脱水になりやすいため、少しずつこまめに与えましょう。
  • 食事:無理に食べさせなくても大丈夫。食欲が出たときに消化のよいものを。
  • 睡眠と安静:夜間の咳で眠れないときは、枕を少し高くして上半身を起こすと楽になることがあります。
  • 薬の内服:処方された薬はしっかり飲みきりましょう。

家庭内感染を防ぐ工夫

マイコプラズマ肺炎は 咳やくしゃみのしぶき(飛沫) と 手や物を介した接触 で広がります。

  • 可能な年齢ならマスクを着ける
  • 手洗いをこまめにする
  • タオルや食器を共有しない
  • できる範囲で寝室を分ける

完全に防ぐことは難しいですが、家族に広がるリスクを減らせます。

登園・登校のめやす

インフルエンザのように決まった基準はありません。

熱が下がっている

咳がある程度落ち着いている

一般的には、この状態になれば、マスクを着けて登園・登校が可能と考えられています。

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まとめ(Take Home Message)

Take Home Message

マイコプラズマ肺炎は「長引く咳」が特徴で、家族や学校で広がりやすい病気です。
抗菌薬で多くは改善しますが、薬が効かない場合もあります。
酸素が足りない、咳で食事や水分がとれない場合は入院が必要です。
家では水分・休養を意識し、家族への感染予防も心がけましょう。

あとがき

臨床の現場では、マイコプラズマ肺炎で夜も眠れないほど咳き込み、つらい思いをする子どもを数多く見てきました。
中には入院が必要になったり、合併症で治療が長引いたりするケースもあります。

「ただの長引く咳」と思って放置せず、気になるときはぜひ早めに小児科に相談してください。
適切な診断と治療を受けることで、回復も早くなり、家族への広がりも防げます。

子育て中の保護者の方へ

最後までお読みいただきありがとうございます。
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