病気 解説

こどものインフルエンザとは?症状・治療・ワクチン・合併症まで小児科医が解説

毎年冬になると流行する「インフルエンザ」。特にこどもは重くなりやすく、保護者としては「どんな症状が出るの?」「薬は必要?」「ワクチンは打った方がいいの?」と心配がつきません。
この記事では小児科医の立場から、インフルエンザの症状・治療・予防法を、できるだけわかりやすくお話しします。

インフルエンザの流行と感染の広がり方

日本では 10月ごろから流行が始まり、1月〜2月にピークを迎えます。

うつってから熱が出るまでの期間(潜伏期)は 2日ほどです。

熱や症状が出る2〜3日前から、出てから10日くらいは人にうつす可能性があります。

うつり方は「咳やくしゃみのしぶき(飛沫)」と「手や物を介した接触」の両方です。

重症化しやすいこども

  • 2歳未満
  • 早く生まれた子(早産児)
  • 心臓や肺、免疫の病気がある子
  • 抗がん剤や免疫を抑える薬を使っている子
  • アスピリンという薬を長く飲んでいる子

かぜとの違い

インフルエンザも「かぜの一種」ですが、ふつうのかぜとは次の点が違います。

  • 急に高い熱が出やすい
  • 体のだるさや頭痛、筋肉痛が強い
  • 子どもでは 熱性けいれん・脳症・肺炎といった合併症を起こすことがある

「ただのかぜ」と思って様子を見すぎず、心配なときは受診をおすすめします。

主な症状

代表的な症状としては以下のようなものがあります。

主な症状
  • 急な高熱
  • 頭痛
  • 咳、のどの痛み、鼻水
  • 関節痛、だるさ
  • 食欲がない
  • 嘔吐や下痢、腹痛など胃腸症状

通常は 1週間ほどでよくなりますが、特に幼児では咳や疲れやすさが長く続くことがあります。

合併症に注意

こどもは次のような合併症を起こすことがあります。

  1. 肺炎
  2. 中耳炎
  3. 熱性けいれん
  4. 意識がもうろうとする(熱せん妄)
  5. インフルエンザ脳症(まれだが重い病気)
  6. 喘息発作

熱が続く、けいれんする、意識がぼんやりする、呼吸が苦しそうときはすぐに受診してください。

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検査について

病院では「インフルエンザ迅速検査」という、いわゆる綿棒の検査をします。

ただし 発熱してから1日以内は陽性でも「陰性」という結果が出ることがあるため注意が必要です。

治療

インフルエンザだからといって 必ず特別な薬(抗ウイルス薬)が必要なわけではありません

薬を使うことが多いのは、「2歳未満の子」「入院が必要な子」「重くなりやすい持病がある子」などです。

インフルエンザの薬

タミフル(飲み薬):5日間内服。症状が1-2日程度早く治まり、重症化を防ぐ効果。
リレンザ・イナビル(吸入薬)
ゾフルーザ(1回飲むだけ。ただし耐性の問題がある)

解熱剤はアセトアミノフェン(カロナール)のみ使えますアスピリンやロキソニンはライ症候群使ってはいけません。アセトアミノフェンは前回の使用から6時間以上経過後に使用してください。

ライ症候群については、以下のサイトを参照してください。

小児の健康上の問題/乳児と幼児における健康上の問題/ライ症候群

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家庭でできるケア

インフルエンザは多くの場合、家で安静にしていれば自然に治ります。

  • 水分補給:発熱や下痢で脱水になりやすいので、少しずつこまめに飲ませましょう。
  • 食事:消化のよいものを食べられる範囲で。
  • 睡眠・安静:十分な休養が回復につながります。
  • 解熱剤の使い方:高熱でつらいときや食事が取れない時などにアセトアミノフェンを使用します。

兄弟姉妹にうつさない工夫

インフルエンザは 咳やくしゃみのしぶき手や物を介した接触の両方で広がります。完全に防ぐのは難しいですが、次の工夫でうつるリスクを減らせます。

  • 可能な年齢ならマスクを着ける
  • 手洗いをしっかり、タオルや食器は共有しない
  • 咳やくしゃみはティッシュや腕の内側でおさえる
  • できる範囲で寝室を分ける

登園・登校のめやす

学校保健安全法では次のように決められています。

発症した日を0日として5日が過ぎ、かつ解熱してから2日(幼児は3日)経つまでは登園・登校できません。

インフルエンザワクチン

生後6か月から毎年の接種がすすめられています

ワクチン接種の効果

救急外来受診や入院のリスクが半分以下に減る
肺炎や脳症といった重い合併症も減る

以下がインフルエンザワクチンの効果を調査した最新の研究です。
Estimated Vaccine Effectiveness for Pediatric Patients With Severe Influenza, 2015-2020 

ワクチンを打ってもインフルエンザにかかることはあります。
ただし、私の臨床経験でもワクチンを打っていない子のほうが圧倒的に症状が重くなりやすい印象があります。

最近は注射だけでなく、鼻から投与するタイプ(経鼻ワクチン)も使えるようになっています。

インフルエンザワクチンについて、詳しくは以下の厚生労働省のページを参照してください。
厚生労働省: 令和6年度インフルエンザQ&A

まとめ(Take Home Message)

Take Home Message

インフルエンザは「かぜの一種」ですが、ふつうのかぜより重くなりやすい病気です。
さまざまな合併症のリスクがあり、注意して経過をみる必要があります。
ワクチンは重症化を防ぐ効果があるので、毎年の接種をおすすめします。
家では水分・休養を意識し、兄弟への感染予防も心がけましょう。

あとがき

臨床の現場では、インフルエンザによって脳症などの重い合併症を起こし、長く入院したり、後遺症が残ってしまったりするこどもを実際にたくさん見てきました。

インフルエンザワクチンを接種することで、こうしたリスクを大きく減らすことができます。
保護者の皆さんには、ぜひこどもを守るために毎年のワクチン接種を検討していただきたいと願っています。

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子育て中の保護者の方へ

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