【小児科医解説】子どものとびひ(伝染性膿痂疹)の原因と治療!アトピーとの深い関係や登園の目安
こんにちは、現役小児科医の『つき先生』です(医師5年目、小児科専攻医)。
梅雨から夏にかけて、保育園や幼稚園、スイミングスクールなどで毎年必ず大流行するのが「とびひ(伝染性膿痂疹)」です。
「ただの虫刺されだと思って、お家にある薬(ステロイド)を塗ったら、一晩で全身にジュクジュクが広がって大惨事に…!」
実はこれ、夏の小児科外来で毎日のように目にする、絶対にやってはいけない「おうちケアの最大の落とし穴」なんです。
診察室に焦って駆け込んでこられる親御さんを毎日のように診ていますが、とびひは正しい知識を持って「初期に適切な治療」を行えば、数日でするりと綺麗に治せる病気です。
この記事では、とびひの原因や種類から、良かれと思ってやったケアが一晩で大惨事を引き起こす理由、お家でのスキンケア(お風呂はどうする?)、アトピー性皮膚炎との深い関係、そして気になる「保育園を休むべき?」という登園の目安まで、現場の小児科医の視点で分かりやすく徹底解説します。
この記事でわかること
- とびひの初期症状と、2つの種類(水ぶくれ・かさぶた)
- なぜ「鼻の穴の周り」や「アトピーの肌」にできやすいのか
- 【超重要】お家のステロイドを塗ると一晩で大悪化する理由
- お家での正しいスキンケア(石鹸の泡での洗い方)と看病のコツ
- 保育園や幼稚園はいつから登園できる?登園許可証は必要?
とびひとは?
細菌がお肌の傷口から入り込んで起こる皮膚の感染症です。
あっという間に全身に広がる様子が、火が「飛び火」するのに似ていることからこう呼ばれます。特に2〜5歳の乳幼児に多く見られます。
主な原因
- 黄色ブドウ球菌(水ぶくれができるタイプ)
夏に多く、子どもに最もよく見られます。 - 溶連菌(かさぶたができるタイプ)
季節を問わず、ジュクジュクして厚いかさぶたができます。
治療の基本
原因が「細菌」なので、市販の保湿剤や虫刺され薬、ステロイド軟膏だけでは治りません。
小児科や皮膚科で処方される「抗生剤(抗菌薬)の塗り薬」や、広範囲の場合は「抗生剤の飲み薬」をしっかり使って治療します。
お家でのスキンケア
- お風呂は控えず、シャワーで石鹸をしっかり泡立てて「優しく洗う」。
- 家族間、特にきょうだいへの感染を防ぐため、タオルの共有は絶対に避ける。
- 患部を触った手から広がるため、ガーゼ等で覆って保護し、子どもの爪を短く切る。
なぜなるの?とびひの種類と原因(水疱性・痂皮性)
お肌の一番外側には、外部のバイ菌から体を守る「バリア機能」があります。
しかし、小さな傷(擦り傷、虫刺され、あせも、かきむしり傷など)があると、そこからお肌の常在菌である細菌が侵入して増殖し、とびひを引き起こします。
とびひには、原因となる細菌の違いによって、大きく分けて以下の2つの種類があります。
1. 水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
子どものとびひの大多数がこのタイプです。
梅雨から夏にかけて、特に2〜5歳の乳幼児に多く見られます。
- 原因菌: 黄色ブドウ球菌(おうしょくぶどうきゅうきん)
- 特徴的な症状
細菌が出す毒素(表皮剥脱毒素)によって、かゆみを伴う小さな水ぶくれができ、それがすぐに破れてジュクジュクした「ただれ(びらん)」になります。
そのジュクジュクした液(内容物)を触った手で他の場所を触ると、そこからまた新しい水ぶくれが一瞬で広がっていきます。
★小児科医の視点:なぜ「鼻の周り」にできやすいの?
実は、原因となる「黄色ブドウ球菌」は、健康な人でも約30%の割合で、鼻の穴(鼻腔)の中や腸管、皮膚に何気なく住んでいる常在菌です。
子どもはよく無意識に鼻の穴に指を入れますよね。
鼻をいじった指で、虫刺されやあせもの傷口をカリカリと引っ掻いてしまうことで、そこからバイ菌が侵入し、とびひが始まります。
だからこそ、とびひは「鼻の穴の周り(鼻孔周囲)」からスタートすることが非常に多いのです。
2. 痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)
季節を問わず、どの年齢でも起こるタイプです。
- 原因菌: 溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)、あるいは黄色ブドウ球菌。両方の菌が混ざって感染していることも多いです。
- 特徴的な症状
急激に皮膚が赤く腫れ、皮膚の一部が破れてジュクジュクしたあと、厚い「黄色いかさぶた(痂皮)」ができます。
水疱性に比べてかゆみは少なく、痛みが強いのが特徴で、溶連菌が関与している場合は時に発熱やリンパ節の腫れ、喉の痛みを伴うこともあります。
★小児科医の視点:日本のとびひは「黄色ブドウ球菌」が圧倒的!
日本の子どものとびひは、水ぶくれタイプもかさぶたタイプも含めて、そのほとんどが「黄色ブドウ球菌」によるものです。
お肌に侵入した黄色ブドウ球菌が「水ぶくれを作る毒素(表皮剥脱毒素)」を持っていればジュクジュクの水疱性に、持っていなければ(あるいは溶連菌と混ざっていれば)分厚い痂皮性になります。
どちらにせよ、細菌感染であることに変わりはありません。
溶連菌については以下の記事で解説してます。
アトピーや虫刺されとの深い関係。特にアトピーの子は注意!
健康なお肌のバリアがあれば菌は簡単には侵入できませんが、お肌のコンディションが悪いとそこが絶好の「侵入口」になってしまいます。
とびひを招くお肌の3大トラブル
- 虫刺されやあせも
かゆくて掻きむしることで、お肌の表面に微細な傷が無数にできてしまいます。 - 乾燥肌(ドライスキン)
バリア機能が低下し、隙間だらけの状態です。 - アトピー性皮膚炎
お肌のバリア機能が著しく低下しており、細菌の温床になりやすい状態です。
アトピーのお子さんは重症化しやすい!
アトピー性皮膚炎のお子さんのお肌は、そうでないお肌に比べて「黄色ブドウ球菌」が定着(付着)しやすく、さらに慢性的な強いかゆみで毎日掻きむしっているため、水痘(水ぼうそう)などと並んでとびひを非常に併発しやすい高リスク群です。
また、アトピーのお肌にとびひが合併すると、お肌全体が一気にジュクジュクになってしまい、どちらの症状なのか見分けがつきにくく、治療が長引く原因になります。
日頃から「ステロイド軟膏」や保湿剤を正しく使い、アトピーの炎症を抑えてツルツル肌(バリア機能が高い状態)をキープしておくことこそが、最大のとびひ予防になります。
アトピーのお肌ケアについては以下の記事で確認を!
とびひの治療:市販薬で治る?抗生剤が必要な理由
「家に余っているお薬や、市販の虫刺され薬を塗っておけば治るかな?」と思われるかもしれませんが、それは絶対にNGです。
基本は「抗生剤(抗菌薬)」の治療
とびひの原因は「細菌(バイ菌)」です。
ですから、細菌を退治する専用の「抗生剤(抗菌薬)の塗り薬(フシジンレオ軟膏など)」や、お肌の広範囲に広がっている場合は「抗生剤の飲み薬」が絶対に必要になります。
適切な抗生剤による治療を開始すれば、多くの場合は数日から1週間程度(皮膚の状態によっては10〜14日)でするりと綺麗に治っていきます。
★小児科医の視点:おうちにあるステロイド軟膏を塗るのは絶対にやめて!
おうちに、以前湿疹でもらった「ステロイド軟膏」が余っていませんか?
「赤いし、かゆそうだからこれを塗っておこう」と、とびひの部分に自己判断でステロイドを塗ってしまうのは極めて危険です。
ステロイドはお肌の「炎症(免疫の暴走)」を強力に抑える素晴らしいお薬ですが、同時にその部分の「免疫力(バイ菌と戦う力)」も下げてしまいます。
細菌の感染症であるとびひにステロイドを塗ってしまうと、細菌が爆発的に増殖し、一晩で火に油を注ぐように劇的に悪化させてしまいます。
「ただの虫刺され」か「とびひ」か迷った時は、おうちの薬を塗る前に必ず小児科を受診してください。
耐性菌(MRSA)や入院が必要な重症ケース
とびひの原因となる黄色ブドウ球菌の中には、一般的なお薬(抗生剤)が効きにくい「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」と呼ばれる細菌が、実は全体の約25%(4分の1)ほど隠れています。
そのため、クリニックでは治療を始める前に、傷口のジュクジュクから少し綿棒で液を採取して、細菌の種類を調べる「培養(ばいよう)検査」を行うことがあります。
お薬を数日飲んでも治りが悪い場合は、この耐性菌の可能性を考えて別のお薬に切り替えます。
また、ごく稀ではありますが、とびひの毒素が血液に入って全身に回り、赤ちゃんがまるで火傷(やけど)をしたように全身の皮膚が真っ赤になってベロリと剥がれてしまう「SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)」という病態や、皮膚の奥深くまで細菌が入り込む「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」などの重症合併症、さらには菌血症を起こして骨髄炎や肺炎などを起こすリスクもあり、その場合は入院の上で強力な点滴治療が必要になります。
つき先生 「ただの皮膚のバイ菌だから」と軽く見ず、全身の熱がないか、ぐったりしていないかもよく観察してくださいね。
おうちでのスキンケアと家族感染を防ぐ看病のコツ
とびひを長引かせず、家族(特にきょうだい)にうつさないために、お家で今日からできるスキンケアの鉄則をまとめました。
1. お風呂は控えず、シャワーで「優しく、しっかり洗う」
「バイ菌がいるんだから、お風呂に入ると患部を広げてしまうのでは?」と心配して、体を拭くだけにされる親御さんがいらっしゃいますが、これは逆効果です。
お肌に増殖したバイ菌や、古くなった軟膏を綺麗に洗い流して清潔に保つことが、治療の第一歩です。
- 石鹸を手のひらでこれでもかと「たっぷり泡立てて」、泡を転がすようにお肌を優しく洗います。
- ゴシゴシこすると、水ぶくれが破れて菌が広がってしまうので、こするのは絶対にNGです。
- 最後はシャワーの温水で、しっかりと洗い流してください。
2. お風呂の順番とタオルの共有禁止
とびひの細菌は、水分を介して非常に簡単に他人にうつります。
家族間の感染を防ぐため、バスタオルや手拭きタオル、衣類の共有は絶対に避けてください。
湯船に浸かる場合は、患者さんであるお子さんは「一番最後」に入り、上がった後はシャワーで全身をよく洗い流すようにしましょう。
(ジュクジュクがひどい時期は、湯船には入らずシャワー浴だけにしておくのが最も安全です)
3. 患部は覆う & 爪を短く切る
ジュクジュクした浸出液(汁)の中に、細菌が山ほど含まれています。
ここをお子さんが触ってしまうと、触った手からどんどん全身に広がります。
小児科で処方された抗生剤の軟膏をたっぷり塗った上から、ガーゼなどで患部を完全に覆い(保護し)、直接お肌に触れないようにしてください。
子どもが無意識にお肌をかきむしらないよう、手の爪は短く、丸く切っておきましょう。
保育園・幼稚園はいつから登園できる?プールは?
「熱もないし本人は元気だけど、保育園は休ませなきゃダメ?」と、働くパパやママにとっては最も気になるポイントですよね。
厚生労働省のガイドラインによる登園・登校の基準
手足口病などと同様に、法律で「何日休まなければならない(出席停止)」と厳密に定められている病気ではありません。
厚生労働省のガイドラインによる登園の目安は、以下のようになっています。
病変部(ジュクジュクしている部分)が、衣服やガーゼ・包帯などで完全に覆われており、直接他のお子さんのお肌に触れない状態であれば、登園・登校して問題ない。
つまり、顔などどうしてもガーゼで覆うのが難しい場所に広く出ている場合や、ジュクジュクがひどくて浸出液が服に染み出してくるような場合は、乾燥して良くなるまでの数日間はお休みすることを推奨します。
【要注意】「登園許可証」が必要なケースが多い!
とびひは非常に感染力が強いため、保育園や幼稚園によっては独自のルールを設け、医師が記入する「登園許可証(または登園に関する意見書)」の提出を求められるケースが非常に多いです。
受診する前に、必ず通っている園のルールを確認し、必要な場合は指定の用紙を小児科へ持参してください。
プールや水泳は完全に治るまで「禁止」!
登園はできても、プールや水泳は完全に治癒するまで絶対にNGです。
プールに入ると、水やビート板、タオルの共有、お互いの肌の接触などを通じて、周囲のお子さんに一瞬でとびひを感染させてしまいます。
また、お肌が濡れてふやけることで症状が悪化しやすいため、お肌が乾燥して医師からOKが出るまでは、水遊びはお休みしてください。
まとめ
とびひは、夏の保育園では避けては通れない、本当によく遭遇する病気です。
とびひは「細菌」が原因。市販の湿疹薬や、おうちのステロイド軟膏は絶対NG!
お家ケアの基本は「泡で優しく洗う」「シャワーでしっかり流す」。
きょうだい感染を防ぐため、タオルの共有は今すぐ中止する!
ガーゼで完全に覆うことができれば、登園は可能。ただしプールは完全完治まで禁止!
あとがき
夏の小児科外来で、「先生、虫刺されにお家にあるステロイドを塗ったら、一晩でこんなに全身に広がっちゃって…」と、泣きそうな表情で我が子を抱えてこられるお母さんに、私は本当によく出会います。
でも、どうか自分を責めないでください。
「赤いブツブツ=おうちにある湿疹の薬(ステロイド)を塗る」という判断は、医療従事者ではないご家族にとって極めて自然な対応です。
お母さんは、ただ「我が子のかゆみを早く取ってあげたかった」だけです。その優しい行動の結果が、たまたま今回のとびひというバイ菌の病気と相性が悪かっただけです。
お薬(適切な抗生剤)を正しく使い始めれば、子どもの若いお肌は驚異的なスピードでツルツルの健康なお肌に生まれ変わります。痕に残ることもありません。
お風呂上がりに毎日家族のタオルを別々に洗ったり、きょうだいが患部を触らないように目を光らせたりするのは本当に骨の折れる看病ですが、数日間の辛抱です。
不安な時は、いつでも私たち小児科医を頼って、一緒にこの夏を乗り越えていきましょうね!
- 日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会
学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説 - 東京医学社『小児内科 第52巻増刊号 小児疾患診療のための病態生理1 改訂第6版』
- 岡本充宏. 小児科ですぐに戦えるホコとタテ. 東京: 診断と治療社; 2022.
- 山田健太著. 笠井正志・伊藤健太監修. 小児感染症のトリセツ2025疾患編. 金原出版; 2025.
本記事は一般的な医療情報を解説するものです。
次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く
上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。
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