病気 解説

こどもの川崎病|症状・診断・治療・注意点まで小児科医が解説

こどもの高熱の原因として意外と多くみられる病気のひとつが「川崎病」です。
川崎病は全身の血管に炎症を起こす病気で、特に心臓を栄養する血管冠動脈)に影響することがあるため、早期の診断と治療が大切になります。
この記事では、川崎病の症状・診断基準・治療法・治療後の生活について、小児科医の立場から分かりやすく解説していきます。

川崎病とは?

川崎病の特徴

川崎病は、全身の血管に炎症が起こる病気で、以下のような特徴があります。

  1. 4歳以下の乳幼児に多いが、学童期以降の発症することもあります。
  2. 日本では70人に1人の頻度で発症します。
  3. 東アジアのこどもに多い。
  4. 原因はまだ判明してません。

このように、川崎病はあまり一般的に知られてはいませんが、日本で意外とよく遭遇する病気です。

川崎病の合併症

川崎病は、全身の血管に炎症が起こる病気ですが、特に注意が必要なのは心臓を栄養する血管(冠動脈)に炎症が及ぶことです。

川崎病で最も重要な合併症が冠動脈瘤です。
これは、冠動脈の一部が炎症によってこぶのように膨らんだ状態を指します。
冠動脈瘤ができると、将来的に狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気のリスクが高まる
ことがあります。

川崎病では、「冠動脈瘤」をつくらないことが何よりも大切です。
そのため、治療後もしばらくのあいだ、定期的に心臓超音波検査(心エコー)を行い、冠動脈に異常がないかを確認していきます。

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川崎病の症状と診断基準


川崎病は、次の6つの症状のうち5つ以上を満たすと診断されます。

川崎病の症状
  1. 発熱(長期間続く)
  2. 両目の白目部分が赤くなる(眼瞼結膜充血)
  3. 唇・舌・口の中が赤くなる(口唇紅潮、いちご舌など)
  4. 発疹(特にBCGの跡が赤くなるのが特徴的)
  5. 手足の指先が赤く腫れる(治ると皮がむけることも)
  6. 首のリンパ節が腫れる

ただし、これらの症状がすべてそろわなくても、冠動脈に異常が見つかったり、他の病気が否定されると、「不全型川崎病」と診断されることがあります。


川崎病は、「こどものからだが全体的に赤くなる病気」と覚えておきましょう。
発症してまもなくは症状が揃わず、診断が難しいことがあります。川崎病を念頭に置いて症状を観察することが重要です。

川崎病の症状は、発熱したその日からすぐにすべて出そろうわけではありません。
多くの場合、熱が出てから3〜4日目ごろに特徴的な症状が揃ってきます

川崎病とよく似た症状を示す病気として、溶連菌感染症アデノウイルス感染症などがあります。
これらはいずれも発熱や首の腫れ、のどの症状を伴うことがあり、川崎病と区別がつきにくいことがあります。

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川崎病の治療

川崎病の治療で1番大切なのは、心臓に「冠動脈瘤」という後遺症を残さないことです。

特に、高熱が10日間以上続くと冠動脈瘤ができやすくなることが知られています。
そのため、できるだけ早く川崎病と診断して、発症から早い段階で治療を始めることが後遺症を防ぐ鍵になります。

川崎病は、「早期診断」「早期治療」が特に大切な病気です。

免疫グロブリン療法

現在、川崎病の治療で最も世界的に標準とされているのが「免疫グロブリン療法」です。
この治療によって、体の中の強い炎症を速やかに抑え、冠動脈瘤ができるのを防ぐ効果があります。

細菌やウイルスからからだを守ってくれる抗体が本体です。
治療開始から1〜2日間かけて点滴投与します。
80%以上がこの治療で改善します。

IVIGの副作用として、まれにアレルギー反応や一時的な血圧の低下が見られることがあります。
ただし、これらは医療スタッフがしっかり管理しながら治療を行うため、安全に投与できます。

免疫グロブリンを点滴しても熱が下がらない場合には、追加で再度投与することがあります。

アスピリン

アスピリンは、熱を下げたり炎症を抑えたりする働きに加えて、血液をサラサラにして血のかたまり(血栓)ができにくくする作用もあります。
このため、川崎病の治療では心臓の血管に合併症が残らないように使われています。

熱が続いている間:1日3回に分けて内服し、体の炎症をしっかり抑えます。
熱が下がったあと:量を減らして1日1回の内服に切り替え、心臓の血管に「冠動脈瘤」ができないように予防する目的で、2〜3か月ほど続けます。

アスピリン服用中にインフルエンザ水ぼうそう(水痘)にかかると、「ライ症候群」と呼ばれる重篤な急性脳症を引き起こすことがあります。
感染症にかかった場合は必ず医師に相談しましょう。

その他の治療と入院期間

川崎病では、血液検査などから重症化のリスクが高いと判断された場合には、免疫グロブリン製剤に加えて他のお薬を併用することがあります。

また、免疫グロブリンを投与しても熱が続く場合には、別の薬剤を使った治療に切り替えることもあります。

入院期間はお子さんの状態や病院の方針によって異なりますが、順調に回復すれば1週間ほどで退院できることもあります

川崎病治療後の生活

退院後の内服について

川崎病では、退院後もしばらくアスピリンを飲み続けることが必要です。
多くの場合、発症から2〜3か月間内服を続け、その後に行う心臓超音波検査(心エコー)で冠動脈に異常がなければ内服を終了できます。

生活・運動について

冠動脈に後遺症が残らなければ、退院後は普段通りの生活や運動が可能です。
ただし、発症から5年間は定期的に心臓超音波検査(心エコー)を受けて、冠動脈瘤ができていないかを確認していくことが大切です。

ワクチン接種について

川崎病の治療で免疫グロブリン製剤を使用した場合、その影響で皮下注射の生ワクチン(MRワクチン、水痘ワクチンなど)の効果が弱くなることがあります
そのため、皮下注射の生ワクチンの接種は6か月間控える必要があります。

予防接種のスケジュールは、お子さんの治療経過や年齢によって調整が必要になるため、必ず主治医の小児科で相談してください。

まとめ

Take Home Message

川崎病は4歳以下の乳幼児に多く、早期診断・早期治療が重要な病気です。
川崎病を疑う症状があれば、すぐに小児科へ!
治療は免疫グロブリン製剤+アスピリンが基本です。
冠動脈に異常がなければ、生活や運動の制限はありません。
ワクチンのスケジュールに注意が必要です。

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あとがき


川崎病は、早期に適切な治療を受ければ、多くのこどもが元気に回復できる病気です。
この記事が、川崎病についての理解を深め、もしものときに役立てば嬉しく思います。
「子どもの発熱や発疹が続いて心配…」そんなときは、迷わず小児科を受診してください!

子育て中の保護者の方へ

最後までお読みいただきありがとうございます。
このブログでは「子どもの病気や健康」に関する正しい情報を小児科医の視点からお届けしています。
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