赤ちゃん原因不明の熱!風邪症状なしは尿路感染症?小児科医が原因と検査を解説
こんにちは、現役小児科医の「つき先生」です。
毎日の育児、本当にお疲れ様です。
夜泣き対応や離乳食の準備で、ただでさえ寝不足の毎日。
そんな中、赤ちゃんが突然お熱を出すと、本当に心細くなりますよね。
外来で診察をしていると、こんなパパやママが本当に多くいらっしゃいます。
「咳も鼻水もないのに、いきなり39度の高熱が出ました……」
「機嫌が悪くて、ミルクも吐いちゃうんです……」
咳や鼻水などの「風邪症状」がないとき。
いわゆる「赤ちゃんの原因不明の熱」に直面したとき。
私たち小児科医が真っ先に疑う病気の一つに、「尿路感染症(にょうろかんせんしょう)」があります。
この記事では、小児科医としての専門知識(最新のガイドライン等)をベースに、尿路感染症の原因や、便秘との意外な関係、そして痛い検査の理由まで、「世界一やさしく」解説します。
少し長くなりますが、これを読めば「なぜ入院なの?」という疑問が解け、 いざという時の焦りがスッと軽くなるはずです。
- 風邪症状がない高熱は「尿路感染症」のサインかも!
- 原因の多くは大腸菌ですが、親のケア不足ではありません。
- 赤ちゃんは痛みを言えないため、「熱」と「嘔吐・不機嫌」が主な症状です。
- 自己判断での「とりあえずの抗生物質」は絶対NG!正しい診断ができなくなります。
- 幼児期以降は「便秘」が原因になることも。ホームケアで予防が可能です。
- 治療は入院して点滴が基本。重症化(腎膿瘍など)を防ぐために1〜2週間の治療が必要です。
そもそも「尿路感染症」ってどんな病気?
「尿路感染症」という言葉。
育児をしていて初めて聞いたという方も多いと思います。
実は、小児全体で見ると、 呼吸器の感染症に次いで2番目に多い細菌感染症なのです。
簡単に言うと、腎臓(じんぞう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道といった、 「おしっこの通り道」にばい菌(細菌)が入り込む病気です。
大人の場合だと、 「おしっこをする時にチクチク痛い」といった「膀胱炎」をイメージしますよね。
しかし、赤ちゃんの場合は少し様子が異なります。
「膀胱炎」と「腎盂腎炎」の違い(表で整理)
尿路感染症は、ばい菌がどこまで奥に入り込んでいるかで、 大きく2つに分けられます。
- 下部尿路感染症(膀胱炎など)
- 上部尿路感染症(腎盂腎炎など)
パッと見て直感的にわかるように、表で整理してみました。
| 特徴 | 下部尿路感染症(膀胱炎) | 上部尿路感染症(腎盂腎炎) |
|---|---|---|
| 感染の場所 | 尿道、膀胱(出口に近い部分) | 腎臓、腎盂(奥深くの部分) |
| 発熱の有無 | なし | あり(高熱が出やすい) |
| 乳児の主な症状 | 頻尿、排尿時の痛みなど | 発熱、不機嫌、嘔吐 |
| 治療方針 | 飲み薬で帰宅できることが多い | 重症化しやすく入院が必要 |
赤ちゃんが「原因不明の高熱」を出している場合は、 ばい菌が腎臓まで到達している、 「上部尿路感染症(腎盂腎炎など)」の可能性が高くなります。
子どもの発熱については以下の記事をどうぞ!
どんな子がなりやすい?男女で違う「好発年齢」
「うちの子は男の子だからならないですよね?」
外来でよく聞かれる質問ですが、実は年齢によって大きく変わります。
生後3ヶ月までは「男の子」が圧倒的に多い!
一般的に、尿路感染症は「おしっこの通り道(尿道)が短い女の子」がなりやすい病気です。
しかし、生後3ヶ月までの赤ちゃんに限っては、男の子のほうが女の子の2〜5倍もかかりやすいというデータがあります。
これは、男の子特有の体の構造や、 おちんちんの先(包皮)にばい菌がつきやすいことなどが関係しています。
幼児期以降は「女の子」が多くなる
生後半年を過ぎ、幼児期や学童期に入ってくると男女比が逆転します。
小児全体で見ると、女の子が男の子の3〜4倍なりやすくなるのです。 やはり構造上、外からばい菌が入りやすいことが最大の理由です。
「なぜうちの子が?」と不安に思うかもしれませんが、 年齢や性別による体の構造が大きく関係している病気だと知っておいてくださいね。
赤ちゃんのサインは「風邪症状のない高熱」と「不機嫌」
大人のように「おしっこが痛いよー!」と、 言葉で教えてくれない赤ちゃん。
乳幼児の尿路感染症の主な症状は、 なんと「発熱」と「嘔吐(おうと)」であることが多いんです。
- なんだかすごく不機嫌で泣き止まない
- ミルクを飲まずにゲポッと吐いてしまう
- 熱があるのに、咳も鼻水も全く出ない
このようなサインで発見されることがほとんどです。
初期はおしっこ検査をすり抜けることも!?
ここで、少しだけ医学的なお話をします。
実は、尿路感染症の初期段階では、 おしっこの検査(尿中白血球など)が正常に出てしまうこともあります。
また、「亜硝酸塩(あしょうさんえん)」という、 ばい菌がいると反応する検査項目があります。
大人だと非常に正確な検査なのですが、 乳児の場合は感度が低い(58%程度)というデータがあります。
なぜだと思いますか?
それは、赤ちゃんは頻繁におしっこをするため、 膀胱内に4時間以上おしっこが溜まらないからです。
ばい菌が反応物質を作り出す前に、外に出てしまうんですね。
だからこそ、「最初の尿検査が正常だから絶対に大丈夫」ではなく、 熱の経過や血液検査、超音波検査などを組み合わせて、 私たち小児科医は慎重に診断をしています。
親ができる尿路感染症の予防策
尿路感染症は、なるときはなってしまうものですが、気をつけれることは次の2つあります。
【親ができる予防策①】おしり拭きは「前から後ろへ」が鉄則!
すでにご存知のパパ・ママも多いと思いますが、おむつ替えのときの拭き方は「前から後ろへ(おちんちんやお股の方から、おしりの穴の方へ)」が基本です。
尿路感染症の原因となる大腸菌はウンチの中にいます。
後ろから前へ拭いてしまうと、ばい菌をわざわざおしっこの出口に運んでしまうことになります。
特に女の子は尿道が短く、おしりの穴との距離も近いため、この拭き方を習慣づけることがとても大切です。
でも、赤ちゃんって、おむつ替えの最中に激しく寝返りを打ったり、ウンチが背中まで大爆発して「前から後ろどころじゃない!」という大惨事になること、日常茶飯事ですよね。
私たち親は、毎日完璧なケアなんてできません。
「前から後ろへ」を心がけていても、ばい菌が入ってしまう時は入ってしまいます。
だから、もしお子さんが尿路感染症になってしまっても、「あの時、拭き方を間違えたせいだ……」なんて、絶対に自分を責めないでくださいね。
小児科医パパのワンポイント:ウンチが大爆発して拭ききれない時は?
べっとり付いたウンチを何度もこすって拭くと、どうしてもばい菌が尿道側に広がってしまいます。そんな時に大活躍するのが、「赤ちゃん用のおしりシャワー」と「使い捨てのペットシーツ」の組み合わせです。
「えっ、ペットシーツ?」と思うかもしれませんが、実は専用のおむつ替えシートよりも圧倒的にコスパが良く、吸水力も抜群な育児の裏技アイテムなんです。
おむつの下にペットシーツをサッと敷いて、おしりシャワー(ぬるま湯)でウンチを洗い流すだけ。
ばい菌をこすらずに落とせるだけでなく、終わったらシーツごと丸めて捨てるだけなので、ベッドも汚れず親のストレスが激減します。
尿路感染症やおむつかぶれを防ぐお守り代わりに、この2つはぜひセットで用意しておくことを強くおすすめします!
【親ができる予防策②】実は「便秘」が大敵です!
もう一つ、幼児期以降のお子さんの場合、親御さんのケアで予防できる意外なポイントがあります。
それは「便秘の解消」です。
腸の中に硬いウンチが溜まっていると、すぐ隣にある膀胱やおしっこの通り道を圧迫してしまいます。
すると、おしっこがスッキリ出し切れず(残尿)、そこにばい菌が繁殖しやすくなってしまうのです。
「最近ウンチがコロコロだな」「数日出ていないな」と思ったら、小児科で便秘のお薬をもらったりして、お腹の環境を整えてあげることが、尿路感染症の立派な予防になりますよ。
診断の難しさと「とりあえずの抗生物質」の罠
病院を受診した際の検査と、気をつけてほしいポイントをお伝えします。
確実な診断には「カテーテル検査」が必要です
おむつをしている赤ちゃんからおしっこを採るため、 お股にシール式の袋(採尿バッグ)を貼ることがあります。
しかし、この方法は「尿路感染症の確定診断」には向いていません。
おむつ周りの皮膚のばい菌が混ざってしまうからです。
そのため、細い管(カテーテル)をおちんちんやお股から入れて、 直接膀胱から綺麗なおしっこを採る検査が必要になります。
「管を入れるなんて痛そう……可哀想……」
そう思う親御さんのお気持ち、痛いほどよくわかります。
ですが、ばい菌の種類を特定し、赤ちゃんに「一番正しい治療」を届けるための大切なステップなのです。
絶対NG!「とりあえず手元にある抗生物質」
ここで1つ、小児科医からのお願いです。
熱が出たからといって、家に余っている抗生物質(抗菌薬)を自己判断で飲ませないでください。
また、別のクリニックで「とりあえず風邪薬と一緒に抗生物質を出しておきますね」と言われて飲んでしまっている場合も注意が必要です。
中途半端に抗生物質を飲んでしまうと、 いざ病院で尿検査をしたときに「ばい菌が検出されない(陰性になる)」ことが多々あります。
本当は尿路感染症なのに、検査で陰性になってしまうと、 「原因不明の熱」として診断が非常に難航してしまいます。
抗生物質は、必ず「尿検査でばい菌を確認した後」に使うのが鉄則です。
治療は「入院して点滴」が基本!重症化を防ぐため
熱を伴う尿路感染症(腎盂腎炎など)と診断された場合、 基本的には入院加療が必要になります。
点滴から飲み薬へ。治療は合計7〜14日間
入院して点滴治療を始めると、数日で熱が下がり元気になってきます。
血液検査の炎症数値が下がってきたら、飲み薬に変更して退院を目指します。
治療期間は、ガイドラインでも合計で7〜14日間の抗菌薬治療が推奨されています。
(後述のAFBNや腎膿瘍の場合は、解熱後もさらに2週間の飲み薬が必要になるなど、少し長引くことがあります)。
【コラム】AFBNと「腎膿瘍」の怖さ
赤ちゃんの腎臓はまだ未熟です。
ばい菌の感染を放置したり、飲み薬で中途半端に治療したりすると、 「AFBN(急性巣状細菌性腎炎)」という、腎臓にばい菌が固まって強い炎症を起こす状態に悪化することがあります。
さらに進行すると「腎膿瘍(じんのうよう)」といって、 腎臓にドロドロの膿(うみ)が溜まってしまうことがあります。
ここまで悪化すると、背中から管を入れて膿を出す(ドレナージ)などの外科的な治療が必要になってしまうこともあります。
このような重症化を防ぎ、将来の腎臓の働きを守るために、 まずは血管から直接、確実に抗生物質を届ける(点滴)必要があるのです。
治った後の「おしっこ逆流検査(VCUG)」は全員やるの?
尿路感染症を起こした子どもの中には、 膀胱に溜まったおしっこが、尿管や腎臓の方へ逆流してしまう 「膀胱尿管逆流(VUR)」という体質が隠れている子が約30〜50%います。
これを調べるために「排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG)」という、 おしっこの管から造影剤を入れてレントゲンを撮る検査があります。
「えっ、退院後にまた痛い検査をするの?全員やるんですか?」 と不安になりますよね。
安心してください。
初回で全例にこの検査をするわけではありません。
最近のガイドラインでは、以下のような場合に絞って検査を行うことが推奨されています。
- 尿路感染症を再発した場合
- 血液検査で腎臓の数値(クレアチニン)が高い場合
- 原因菌が「大腸菌以外」だった場合
- 超音波検査やCTで、腎臓の腫れや「AFBN」などの異常が見つかった場合
退院する前に必ずエコー(超音波検査)で腎臓の様子を確認し、 これらの条件に当てはまる場合のみ、退院から2〜3週間後に造影検査をご案内します。
まとめ:Take Home Message
とても長くなってしまいましたが、 最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
この記事の重要なポイントをまとめます。
- 咳や鼻水がないのに高熱・不機嫌なときは、尿路感染症を疑って小児科へ!
- 生後3ヶ月は男の子、それ以降は女の子に多い。親のケア不足ではありません!
- 便秘が原因になることもあるため、日頃のお腹のケアが予防に繋がります。
- 正しい診断のため、自己判断での「とりあえずの抗生物質」は絶対NG。
- 重症化(腎膿瘍など)を防ぐため入院して点滴治療。抗菌薬は合計7〜14日間使います。
あとがき(小児科医パパのひとりごと)
私たち小児科医は、病気を治すことだけが仕事ではありません。 毎日必死に頑張るパパやママの不安に寄り添い、 その重荷を少しでも軽くすることも、とても大切な使命だと思っています。
「こんなことで受診していいのかな?」なんて遠慮は、一切不要です。
親御さんの「なんとなくおかしい」という直感は、本当に正しいことが多いですから。
少しでも不安に思ったら、いつでも気軽に、かかりつけの小児科に相談してくださいね。
今日もおむつ替え、寝かしつけ、本当にお疲れ様です。
明日もぼちぼち、一緒に育児を頑張っていきましょう!
- 第 51 回日本小児感染症学会総会・学術集会教育講演 小児の尿路感染症Up-to-Date
- 岡本充宏. 小児科ですぐに戦えるホコとタテ. 東京: 診断と治療社; 2022.
- 山田健太著. 笠井正志・伊藤健太監修. 小児感染症のトリセツ2025疾患編. 金原出版; 2025.
本記事は一般的な医療情報を解説するものです。
次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・ぐったりして元気がない
・呼吸が苦しそう、顔色が悪い
・水分がとれない、尿が極端に少ない
・けいれんが5分以上続く
上記以外でも「いつもと違う」「判断に迷う」場合は、
早めに医療機関へご相談ください。
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