赤ちゃんが生まれて最初に受ける健診が「1ヶ月健診」です。必須ではないものの、ほとんどのご家庭が受けている大切な健診で、赤ちゃんの発育や健康状態を確認する良い機会です。この記事では、小児科医の立場から1ヶ月健診の目的や診察内容、受けるメリット、よくある質問についてわかりやすく解説します。
1ヶ月健診とは?
1ヶ月健診は義務ではない任意の健診ですが、ほとんどの赤ちゃんが受けています。お母さんの産後健診とセットで実施されることが多く、赤ちゃんと母体の健康を同時にチェックできる大切な機会です。

1ヶ月健診で確認すること
質問項目
1ヶ月健診で確認することについて、特に重要なものとしていくつかご紹介します。
- 身長・体重はしっかり増えているか
- 母乳やミルクは飲めているか
- うんちの色は正常か
- この1ヶ月間で困ったことはなかったか
- マススクリーニングの結果説明
身体診察
隠れた病気を見つけるために以下のチェックポイントがあります。
- 光線療法が必要な黄疸がないか
- 大泉門や顔貌は正常から大きく外れていないか
- 胸の音(心雑音・呼吸音)に異常がないか
- お腹が張っていないか
- 背中にできものがないか
- 男の子の場合:精巣が陰嚢内に降りているか
- 股関節に異常がないか
- 光に視線が向くか
- 原始反射が出ているか
- 湿疹など皮膚の状態
1ヶ月健診を受けるメリット
成長のチェックができる
体重や身長の増加は「しっかり飲めているか」の重要なバロメーターです。
1日あたり25g以上が目安で、1日60〜70g増えることもあります。1日20g未満の場合は要注意です。
「哺乳量が足りているか」「飲みにくさの背景に病気が隠れていないか」といった観点からも非常に大切なチェックになります。
逆に、体重がよく増えていること自体は良い傾向であり安心材料です。むしろ「増えすぎて心配」という場合でも、栄養がしっかり取れている証拠として前向きにとらえて大丈夫です。
生まれつきの病気のスクリーニング
1ヶ月健診では、生まれつきの病気(先天異常や機能異常)を早い段階で発見することができるという重要な役割もあります。
心臓の雑音(先天性心疾患)、背中の皮膚異常、精巣が陰嚢に降りていない、股関節の異常といった異常を見逃さずにチェックできます
これらの異常は、成長や発達に大きく関わることもあるため、早期発見がとても大切です。
1ヶ月健診で「成長が悪い」などのサインがあった場合も含めて、必要に応じて精密検査やフォローアップへとつなげていくことが可能です。
育児の悩みや疑問を相談できる
育児では、多くの不安や疑問がつきものです。
1ヶ月健診は小児科医や助産師に直接相談できる貴重な場でもあります。
普段元気な赤ちゃんは病院に行くことも少なく、聞きたくても聞けないことを解決できるチャンスです。
ワクチン接種への橋渡し
生後2ヶ月から始まる定期接種の前に、1ヶ月健診で予防接種スケジュールの説明や案内を受けることができます。
ワクチン接種はつい忘れがちですが、特に乳児期のワクチンは命を守る大切なものです。
肺炎球菌ワクチンの導入によって、生後3ヶ月未満の赤ちゃんの細菌による髄膜炎はほとんどいなくなりました。
よくある質問(Q&A)
吐き戻しが多いのですが大丈夫ですか?
体重・身長が順調に伸びているのであれば、基本的には心配いりません。
赤ちゃんは哺乳がまだ上手ではないため、空気を一緒に飲んでしまい、それが原因で吐き戻すことがあります。
哺乳した後にはゲップをさせることが大切です。さらに、泣いた後やお腹が張って苦しそうなときにもゲップをさせることで楽になります。
吐き戻しは、成長とともに上手に哺乳ができるようになるため、生後半年ごろにはほとんど見られなくなります。
頭の形が気になります
生後3ヶ月ごろまでは、頭への圧のかかり方で形が変わりやすい時期です。
特に「むきぐせ」があると左右非対称になりやすいため、以下の対策が有効です。
- 赤ちゃんの体勢をこまめに変える
- 人のいる方向や光のある方に自然に頭を向けるよう環境を調整
- うつ伏せ時間を活用する
ただし、うつ伏せ寝は危険と隣り合わせであり注意が必要です!
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク因子である
- 柔らかい枕や布団に顔が埋もれて窒息の危険もあります
うつ伏せは必ず親の目が届く時だけにして、硬めのマットで行いましょう。
ヘルメット治療も増えてきましたが、保険適用外であり、数十万円かかります。そのため、早めの予防的ケアが最も効果的です。
鼻詰まりや目やにが気になります
哺乳ができていて、呼吸が苦しそうでなければ大丈夫です。
赤ちゃんの鼻や気道はとても細く、ちょっとした分泌物でもすぐに「フガフガ」します。吐き戻しが多い場合も、詰まりやすくなります。
また、鼻が詰まることで、目やにが増えることもあります。
湿疹が目立ちます
放置するとアトピー性皮膚炎へと移行する可能性もあります。
詳しくはこちらの記事(アトピー性皮膚炎)をご覧ください。

他に気になることがあれば、お問い合わせフォームから気軽に相談してください。
まとめ
成長の確認、育児相談、ワクチン接種準備など、多くのメリットあり
早期に生まれつきの病気がないか確認できる機会
よくある悩みも相談できる
1ヶ月健診は親子にとって非常に有意義な機会となります。ぜひお越しください。

あとがき
生まれてからの1ヶ月、親としても初めての育児に奮闘されたことと思います。
1ヶ月健診は、赤ちゃんのためだけでなく、親御さん自身の安心のためにもとても大切な時間です。
気になることがあれば、どんなに小さなことでも遠慮せずに相談してください。
こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業
(研究代表者:永光信一郎、日本小児科医会・日本産婦人科医会・日本小児科学会・日本産科婦人科学会・日本新生児成育医学会 研究協力)
令和6年度 1か月児健康診査マニュアル
最後までお読みいただきありがとうございます。
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